【ネタバレあり・レビュー】映画『ゲーム・ナイト』に見る、ブラック・コメディの難しさ!
ブラック・コメディとは、悪趣味で「なんじゃそりゃ」という思わず笑ってしまうあり得ない展開を楽しむものです。(個人的な感想で)
とはいえそれは強すぎればドン引きに、弱ければそもそもコメディとして成り立たないものとなってしまいます。
今回はそんなブラック・コメディの難しさを『ゲーム・ナイト』という作品を通して見ていきます。
作品概要
原題:Game Night製作年:2018年(日本未公開)
監督:ジョン・フランシス・デイリー、ジョナサン・ゴールドスタイン
脚本:マーク・ペレス
主演:ジェイソン・ベイトマン、レイチェル・マクアダムス
ストーリー
ゲーム愛好家であるマックスとアニーの夫婦は、夜な夜な友達を呼んではゲームに興じる日々を送っていた。ある夜、マックスの兄ブルックスに誘われた二人は友人たちと彼が主催するゲームに参加する。
そのゲームとは、これから誘拐されるゲームナイトに参加したメンバーを探すというものであった。
ブルックスの宣言通り誘拐犯が現れ、彼は誘拐される。
ゲームに興じるマックスたちであったが、やがてその誘拐が本物であったことに気づく。
感想
ブラック・コメディの特性を生かした、お約束の展開ありきで進むテンポの良いストーリーが楽しい作品でした。一番の魅力であったのがキャスト陣。
ジェイソン・ベイトマンとレイチェル・マクアダムス(おそらく知名度は彼女が一番高いハズ)を中心に、「本人らは真面目だけれど端から見たらバカバカしい」という面白さを俳優たちの力により引き出していたと思います。
他のキャストもいい味を出しており、マックスとアニー以外、活躍するシーンがほとんどないのにしっかりと記憶に残りました。
ストーリーについてですが、上にも書いた通りテンポよく進みます。
そのため二転三転するストーリーながらも非常に分かり易い。
ただ、簡単に消化できるからと色々と詰め込み過ぎていた感もあり、どの要素も淡泊になっていた気がしたのが少々残念でした。
ブラック・コメディの難しさ
ブラック・コメディとしての掴みを作る
おそらくブラック・コメディというジャンルにおいて最も重要となるのが掴みです。もし、ここでつまずいてしまうと、ジャンルを知らずに見た人は「これなんの映画だ」となってしまい、ジョークを取り入れても?状態に陥りますからね。
その観点で見ると本作はつまずいていたように思えます。
謎の隣人ゲイリーの存在であったり、ブルックスが提案する"誘拐ゲーム"など、普通にシリアス調な印象を受けたからです。
というか、コメディ要素が出てくるのはマックスとアニーがブルックスの誘拐が実はゲームでないと判明した頃から。時間にして既に30分くらい経過していたかと思います。
で、その原因は
ブラック・コメディはどこまで派手にするべきか
この作品で一番ネックとなっていたであろう要素がここです。確かにシリアスの中にコメディ調を入れるというブラック・コメディを展開はしていました。
けれど、そのどれも中途半端なのです。
例えば、拳銃で誤射されるシーンではリアクションもせず普通に痛がったり、敵を倒そうと動かしたベルトコンベアがゆっくり過ぎてまったく意味がなかったりと、なんだか笑うタイミングもない地味なシーンばかり記憶に残っています。
思いっきり悪趣味な要素を入れたりせず手堅く作っている感じがしたのでブラック・コメディというよりは、シリアスに少しユーモアを加えた程度に収まっていたように思えます。
監督のやりたいことだけだとコメディにならない?
コメディ要素なのかは不明ですが、本作やたらと他の映画を引き合いに出していました。「96時間」や「シックスセンス」、「ファイトクラブ」、「ジャンゴ 繋がれざる者」などです。
で、それらの作品のパロディも入れているのですが、これが笑えるかといったら……特に笑えません。
作品を知っていれば「そんなシーンもあったなぁ」とは思えるのですが、果たしてこのリアクションが正しいのかどうか……
なんにしても、監督(あるいは脚本家?)がコミカルな要素として入れたかったのかもしれませんね。