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【レビュー】「イエスタデイ」 ファンも知らない"ビートルズ"がいない世界!

ボヘミアン・ラプソディー』、『ロケットマン』など近年、ブームが来ている音楽映画。
そんな中、公開されたのがこの作品『イエスタデイ』


イギリスの伝説のロックバンド「ビートルズ」を題材にしている。
とは言っても、この作品はガンガン名曲を聞かせるわけではない。
主人公ジャックがビートルズの曲の歌詞を思い出すため、ビートルズ縁の地を訪れる一種の聖地巡礼映画になっているのだ。
そのためどちらかといえば、ライトなビートルズファンよりも、コアなビートルズファンに向けてのサービスが込められている作品のように見受けられた。


だが、ライブシーンとなればライトもコアも関係なく盛り上がることが出来るのがこの作品の利点であった。
誰もが一度は耳にしたことがある、ビートルズの名曲たちを映画館の大音響で聞けるのだから当然だろう。
そこへ、ライブさながらの大観衆も待ち受けているのだからその臨場感は凄まじいものであった。


さて、この作品で一番の課題となっていたのが「ビートルズファンへの挑戦」であっただろう。
ビートルズの曲を他の人間が歌うのだ。ハードルとしてはなかなかに高かったと考えられる。
ビートルズは「有名曲を知っている」程度の私としては、歌唱力に問題はなかったし、様々な曲を満遍なく聴くことができるのは魅力であった。
レビューなどを見ても、平均スコアが4/5と高い事実もあって、コアなファンにも受け止められていたのではないかと思う。


そもそも、ビートルズを題材にした映画は『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!(ハード・デイズ・ナイト)』、『ザ・ビートルズ?EIGHT DAYS A WEEK』など、本家本元の音楽をじっくりと堪能できる作品が他にもある。
コアなファンなら文句を言う以前にそちらを見ているだろうから、この作品を「一風変わった、ビートルズを題材にした作品」として受け止められることだろう。

恋愛パートがビートルズに特に関係なく、やや中だるみがあったことは認めざるを得ないわけではあるが。

この作品は、冒頭に挙げた音楽映画2作品の「ガンガン名曲を掛けまくる」という内容とは少し異なり、ストーリーに比重を置いていたような印象が強い。
伝説的なバンドの曲を我が物にしていいのか、それとも残すために歌い続けるべきなのか、という葛藤に苛まれるのもこの作品のオリジナル要素だ。
ビートルズの偉大さを、流行する過程から楽しませるだけでなく、ミュージシャンとしての倫理も教えてくれる素敵な作品だったと言える。
もし、目が覚めたときに世界中がこの映画の存在を忘れていたのなら、脚本を書き起こしてダニー・ボイルに渡すべきだろう。