【ネタバレあり・レビュー】ザ・レジェンド | 伝説の男ニコラス・ケイジがヘイデン・クリステンセンと挑む超アクション歴史映画!
作品概要
原題:Outcast製作年:2014年(日本公開:2015年)
監督:ニコラス・パウエル
脚本:ジェームズ・ドーマー
主演:ヘイデン・クリステンセン、ニコラス・ケイジ
ストーリー
12世紀の極東・中国。皇帝が死を迎えたことからその跡継ぎとして長男シンが次期皇帝の座に着いた。
しかし、皇帝の死はシンによるものであった。
彼は皇帝の遺言により本来次期皇帝になるハズだった次男ジャオを消すため兵を送り出す。
姉リアンと共に逃げていたジャオは、その道中、元十字軍の騎士であったジェイコブを用心棒として雇う。
内容はこてこてなアクションもの
本作、12世紀の中東での十字軍vsイスラム教徒の戦いから物語が始まり、その後舞台を極東(中国)に移します。個人的になのですが、この時代の中国文化には少し苦手意識があります。
権力を巡っての家族間のごたごたとかは小難しくて着いていけなくなることがあるからです。
そうして見ると本作は非常にシンプル。
「長男が皇帝になりたいがために父を殺害。本来の後継ぎ候補であった次男を殺そうとする」という分かり易さは、歴史苦手な私でもすんなり呑み込めました。
で、その次男を助けるのが主人公にして元十字軍に所属していたジェイコブ。
偶然、落ちぶれていた最強の騎士が襲撃現場に居合わせるという展開はなんとも都合が良いです。
他にも、ダメージを負っても気合でどうにかしてみたり、敵側が圧倒的に有利なのにボス自ら戦いに赴いてきたり、とアクション映画にはありがちなアレコレが詰め込まれていました。(もちろんヒロインとの恋愛もあり)
それらを見て思ったのが「これ歴史ものじゃなくアクションものなんだな」ということでした。
まあニコラス・ケイジが出演している時点でエンタメ作寄りなのは明確。
それを割り切って見れば楽しめる作品だったと思います。
見どころはやはり大物俳優の二人?
ニコラス・ケイジに惹かれて鑑賞したこの作品。あらすじとかよく見ていませんでしたが、蓋を開けてみれば彼は主人公ではなく少しガッカリ。
とはいえ、ヘイデン・クリステンセンも『スター・ウォーズ』(新三部作)で名を挙げたなかなかの逸材。彼が主演であったことで、作品に面白さがあったことは事実だと思います。
そんな二人が共演するのは冒頭と終盤くらい。
かつて仲間同士であったことから、悪態を吐きながらもジェイコブ(ヘイデン)を助けるガレイン(ニコラス)のツンデレっぷりがなんだか微笑ましい。
一方で、ガレインは正気を失いつつあるのか、言動が少しおかしくもあります。(ヘビを手に巻きつけながら遊んだりとか)
そこら辺は、ニコラス・ケイジの演技力が発揮されていました。(ツンデレっぷりも合わさると、情緒不安定すぎて心配になるレベルでしたが……)
ジェイコブとガレインの二人は「打倒シン」という目的の合致もあって共に戦うことに。
もはやお約束な展開ではありますが、ヘイデンとニコラスの二人が共闘する展開は自然と盛り上がってしまいますね。
その共闘が少ししか見れないというのがやや残念でした。
とはいえ、ニコラスの扱いはそこまで悪くなかったようにも思えます。
僅かな時間でありながら、友人思い、仲間思い、愛妻家という濃いキャラを見せており、鬼神のごとく敵をなぎ倒す姿は正直カッコよかったです。
主人公を食わないまでも存在感のある活躍をしていたというのは、サブキャラとしては優遇されていたのではないかと思いました。
超荒っぽいアクション
この作品最大の売りはやはりアクションシーンでしょう。過去に『スター・ウォーズ』でもチャンバラ劇を見せているクリステンセンだけにその実力は十分……なのですが、あちらの作品とはまるで感じが違いました。
というのも、あちらはジェダイ特有の騎士道精神を持ち合わせており、戦い方もなんだかスマートです。
一方、本作は元十字軍という騎士の立場ではあるもののヘロインでヨレヨレ、戦い方も砂を投げつけてでも勝つというスタイルでした。
しかし、その荒くれ者の何でもありなスタイルが個人的にはヒット。
力任せに剣をぶん回し、ダメージを負いながらも気合いで走り、最後には乾拭き屋根の家をクッションに飛び降りるようなスマートさの欠片もないアクションは先の読めない面白さがありました。
なんだかんだで最後には勝ってしまう勢いも良さだったのだと思います。
大味すぎるアクションシーンばかりでしたが、最後までそれを臆することなく貫いていたのが面白かったですね。
中国では問題作?
この作品は中国が舞台。そのため、中国は製作に大きく関わっています。しかしながら、本作は中国で公開延期の憂き目に合いました。(2014年9月26日⇒2015年4月3日)
今回はその話について調査をしてみた……のはいいのですが、結論から言ってしまうと明確に「これ!」という理由は明示されていないようです。(個人的に調べてみた結果では)
それもそのハズで、この作品は事前に行われた検閲ではセーフの判定を受けていました。
しかし、公開前夜の真夜中に急きょ配給会社である「中国電影集団」が延期を指示。共同製作を行っていた「Arclight」はその理由も聞かされないままの中止に混迷を極めていたらしいです。
実際、監督のニコラス・パウエル、主演のヘイデン・クリステンセンも宣伝のため中国入りをしていたらしく、本当に突然の中止だったのでしょう。
では一体何が原因だったのか、説としては2つあります。
まず1つ目が描写の問題。
この作品、主人公ジェイコブらが敵をバッサバサと剣で切り殺していくアクションが売りとなっていました。
とあるシーンでは投げた槍で兵士の頭をぶち抜くというグロテスクなシーンもあり、日本でも区分はR15+判定を受けています。
そうした暴力的描写が問題視されたのではないかというのが1つ目の説です。
現に、クエンティン・タランティーノ監督作『ジャンゴ 繋がれざる者』では暴力シーン(とヌードシーン)の過激さから、公開後ではあるものの中止される事態が起きていました。(該当シーン削除後に再上映)
2つ目の説が白人の優位性を押しすぎていたことです。
これについては批評家からも指摘されていることらしく、香港では実際、これが理由で公開中止、DVDリリース等もされない事態に陥ったそうです。
たしかにジャオやリアンは守られるだけの存在(助けようとしても逆にジェイコブに助けられる始末)、長男のシンはド悪党と、アジア系のキャラクターに対する扱いは正直微妙でした。(モブキャラはほとんど全滅ですし)
ただ、酷評されるほどかといったらそこまでは思わなかったのも事実です。
割とこれくらいの描かれ方がされている作品はありそうなものですが……
舞台となった国だからこそ許せない点なんてものもあったのかな?と、思いました。
なんにせよ、香港での動きもあったことから有力な説として挙げられていたようです。
以上、2つの説が中国での公開延期の原因として考えられています。
理由がどちらであるにしても、個人的に大きく評価が変わる訳でもなし、そこそこ楽しめる作品であったと思います。