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【ネタバレあり・レビュー】モスキート | とにかくデ蚊い!夏場には見たくない蚊映画の決定版!

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蚊、それは人類誰しもが一度はわずらわしさを感じたことがある存在でしょう。
勝手に血を吸われ痒みを残されるという理不尽さ、羽音の不快さを考えると人類の敵と言っても過言ではありません。
「その蚊がもし巨大化したとしたら……」
そんなおバカな発想を1994年の技術力で再現した映画が今回レビューする『モスキート』です。

作品概要

原題:Mosquito
製作年:1994年(日本未公開)

監督:ゲリー・ジョーンズ
脚本:ゲリー・ジョーンズ、 スティーヴ・ホッジ、トム・シャネイ
主演:ガンナー・ハンセン、ロン・アシュトン

ストーリー

ある夜、公園の沼に隕石が落下した。
そこにいたボウフラたちはその放射線を浴びて成長を始める。

恋人メーガンを乗せ、レイは公園へと車を走らせていた。
その道中、彼らは巨大な何かを轢き殺してしまう。
公園へ向かった二人は、そこでミイラ化した死体を見つけ、只ならぬ事態が起きつつあることを知る。

蚊がデカい!ただそれだけのストーリー
この作品、冒頭にも書いたようにおバカだと思います。
なぜなら「降ってきた隕石の影響で蚊がデカくなった!」ってだけでストーリーはほぼ終結しているから。

ただ、おバカだからといって悪いかと言ったらそんなことはありません。
むしろ、「蚊がデカくなる」なんていういかにもB級映画っぽい考え方をしているのですから、その設定もぶっ飛んでいていいんだと思います。
逆に「蚊が大きくなったメカニズムは……」とバカ真面目に説明しても、それはそれでネタっぽくもなるような気もしますが……
結局、蚊がデカくなった時点でおバカ設定なんですよ。

そのぶっ飛んだ設定のおかげか、テンポがいいのも作品の魅力。
銃撃戦、攻城戦、カーチェイスなどなど、やりたいことをしっかりやっていくスタイルは、見ている側としても気持ちのいいものでした。

ただし、蚊が「デカくなった」以外の特徴がないのはやや残念。
「火を吹いたりしろ」とまでは言いませんが、ずっと蚊が襲ってくるだけというのは、時間が経つに連れてマンネリ感が出てきていたと思います。
92分という上映時間は、退屈にさせないギリギリの時間だったと言えるでしょう。

厄介者だけど嫌いになれないキャラクターたち
モンスターパニック映画でありがちなのが、キャラクターが次々に死んでいく展開。
本作も結果的に5人中3人になるわけですが、他のモンスターパニック映画よりもキャラクターが魅力的に思えました。

喧嘩っ早いレイとその恋人メーガン。公園管理者のヘンドリクスに、文句タラタラのパークス、強盗アール。
こうして挙げてみるとロクな奴がいません。けれど見ていると自然と受け入れられるのが面白い所です。

その理由はおそらく蚊との戦いで必死にサバイバルをしているから。
どれだけ変なヤツであっても、蚊に襲われ、必死こいて生き残っている姿を見れば自ずと応援したくなるというもの。要はそれだけ蚊との攻防が楽しめたわけです。
基本的にバラバラな考えの5人ではありますが、「生き残る」という目的のために結託するというのも面白い構図でした。

さて、キャラクターの話で絶対に触れておきたかったのが、アール役のガンナー・ハンセンについて。
彼は『悪魔のいけにえ』のレザーフェイス役として有名。つまりはチェーンソーとゆかりのある人物なんですね。
で、今作でもそのチェーンソーを使った活躍があるというファンサービスがありました。
しかも「20年ぶりだぜ」とメタ的なセリフも言っており、ファンには堪らないサプライズを見せてくれていました。(『悪魔のいけにえ』公開が本作のジャスト20年前の1974年)
チェーンソーを持たせただけでここまで盛り上がる俳優なんて彼くらいでしょう。

ハンセンは惜しくも2015年に亡くなっていますが、こうして作品内に活躍が残っているというのは嬉しいものです。
悪魔のいけにえ』が好きな人なら彼がチェーンソーを持った姿を見れるだけでも一見の価値ありの作品となるでしょう。

ベストを尽くしてしまった蚊の造形美
この作品で強く印象に残るもの。それは間違いなく、蚊のヴィジュアルでしょう。
我々が想像する蚊の姿をそのままデカくしたかのようなその見た目は、ゾッとするほどキモイ。(誉め言葉)
口器がニュルンと体液を纏わせながら伸びてくるのもいい意味でキモかった。

その見た目だけならまだ耐えられますが、それが飛び回るのですからより恐ろしい……
その飛び回るシーンで生かされているのが1994年という時代の技術。
当時はまだビッグタイトルでもない映画にCGを多用することは難しかったのか、蚊の動くシーンではストップモーション技術が使われているようでした。
現代では逆にあまり見る機会のなくなった技術だけに、その時代を感じると共に、製作陣の苦心が感じられました。

そんなデカい蚊の末路が破壊されることです。
車にはねられペチャンコになったり、銃で撃たれて粉々になったり、チェーンソーで切られたり、炎で燃やされたり……
バリエーション豊富なあの手この手でグロテスクに死んでいく蚊たちの姿はもはや芸術的。そのこだわりようには感動させられました。

じっくり見ると手作り感満載ですが、その粗っぽさが逆に生々しくて気持ち悪さを演出していたと思います。


実在するデ蚊イやつら

巨大な蚊たちが大暴走を見せるこの作品。
「ありえねー」と笑いながら見るのが正解なのでしょうが、果たして本当にあり得ないことなのでしょうか?
まだ見つかっていないだけで、実は私たちの知らない場所で巨大な蚊が存在するかもしれません。
というわけで、今回は実在するデカい蚊についてまとめてみました。

まず大前提として、私たちがよく見る一般的な蚊アカイエカのサイズは5.5mm(0.55cm)
これを前提に、デカい蚊たちの大きさを感じて見てください。

とにかくデカい蚊
巨大な蚊としてギネス記録にも載せられているのが、中国四川省で発見されたミカドガガンボ。
ガガンボ(大蚊)という種類がそもそもデカい蚊なのですが、ミカドガガンボはその中でも最も大きい種とされており、初めて発見されたのは日本でした。

そんなミカドガガンボ、体長30〜38mm(3cm~3.8cm)が一般的とされています。
で、中国で発見された最大のガガンボはなんと体長50mm(5cm)。普通の1.5倍くらいあります。
前足の先端から後ろ足の先端までを計れば258mm(25.8cm)。映画チラシの縦長が25.7cmとちょうどイメージしやすいサイズです。
あれくらいの大きさの蚊が顔に止まろうと飛んで来たらと思うとゾッとしますね。

しかし、コイツらは吸血はしない割と無害なヤツ。しかも体も脆く、足とかすぐもげちゃうそう。
そこで次は吸血能力のある危険なデカい蚊をご紹介します。


世界的に危険なデカい蚊
吸血能力がある危険な蚊が最近になって確認されています。
それが2018年9月ハリケーン・フローレンスの影響で発生した「プロソフォラ・シリアタ」という種類の蚊。
この蚊は、吸血時に1ガロン=約3.8リットル吸われそうなくらいデカいということから通称「ガリニッパー」(gallon + nipper = gallinipper)と呼ばれています。

その体長はおよそ20mm(2cm)前後と確認されているらしく、やはり普通の蚊と比べるとデカい。
1ガロンくらい吸われそうだという認識もあながち間違いではないと思います。

そんなデカい蚊ガリニッパーですが、一番危険視されているのが刺された時の痛みです。
その一刺しは牛の皮膚をも貫くと言われており、その時の痛みは燃えるようなものなのだとか。

現在の所、日本では未確認の種ですが、アメリカを脅威に陥れた危険な蚊としてその名を残しています。