【レビュー】武器よ去らば(1932)(ネタバレあり)
第二次世界大戦を題材とした作品は数多く存在します。
第一次世界大戦を題材とした作品も少なくはないでしょう。
それでは、第二次世界大戦が始まる前に作られた第一次世界大戦を題材にした作品ならどうでしょうか?
今回レビューする『武器よ去らば』は、かの有名なアーネスト・ヘミングウェイが1929年に書き上げた小説を原作に、1932年に公開された第二次世界大戦勃発前の作品です。
およそ90年前の作品だけに、そもそも波長が合うのかどうかすら怪しいと思っていましたが、これが結構イケていました。
理由として上げられるのがストーリー。
第一次世界大戦中、イタリア軍に所属するアメリカ人フレデリックが、看護婦のキャサリンと恋仲になるも、戦争によって引き裂かれるという、王道なラブロマンスです。
シンプルでいて飾らない、愛するか愛されるかだけの物語。
そのシンプルさが「昔の作品って退屈なのでは?」という固定概念を崩してくれていました。
そこへアクセントを加えるのが戦争要素です。
出撃前のイタリア軍の様子をフレデリックと、その友人である小佐リナルディの視点から描いていました。
で、印象的なのが「とにかく酒を呑みまくり、女に飢えている」ということでした。
まあ、後者はリナルディに限った話なのかもしれませんが、お酒についてはフレデリックらの運命を左右するくらいには重大な影響をもたらせていました。
とはいえ、いつ尽きるとも分からない命がけの日々を前にすれば誰だって酔いたくもなるのでしょう。
戦争関連の話で面白いのが、フレデリックが敵兵を相手取って殺しをする描写は一切ないということです。
たしかに戦場に出るシーンはあるのですが、彼は愛のために命がけで軍から逃走(当時は軍から逃げ出すと銃殺されます)し、軍から追われる身となります。
彼は爆撃により重傷を負うなど、とにかく戦争に翻弄され、傷つけられる存在でした。
そんなフレデリックの唯一の心のありどころがキャサリンでした。
まるで、戦争の現実など忘れるかのように甘く幸せな時間を過ごす彼らの姿は微笑ましい限りです。
特に、二人の慎重差はかなり萌える要素だったと思います。(フレデリック役のゲイリー・クーパーが190cm、キャサリン役のヘレン・ヘインズはそれより20cmくらい低め)
また、キャサリンが「過去に付き合っていた女がいても言わないで欲しい」といった独占欲を見せたりするのもまたかわいいです。
時が過ぎようが、ラブロマンスのときめくポイントは変わっていないと思いました。
そうしたイチャイチャを経て、二人はミラノの病室で神父立ち会いのもと結婚します。
戦時中だけに浮わついた空気をよく思わない風潮もあるようで、ひっそりとした結婚式を行うしかないわけなんですね。
しかし、厳かな雰囲気で執り行われる結婚式は、お互いが真剣であることを明白にしており、まるで二人だけの秘め事のようでロマンチックでした。(神父もいるので正確には3人でしたが)
そんな二人にとって、戦争の勝敗は関係ないというのが、最も感慨深い内容でした。
戦争の勝敗よりも、二人で平和に暮らすことこそが理想であったわけです。
そんな未来が来ることを願い、ラストシーンでキャサリンを抱き上げたフレデリックが世界平和を祈る言葉を口にするシーンは感動的でした。
戦争に振り回された彼だからこそ、その言葉に重みがあり、意味があるのだとつくづく思いました。
皮肉にも、この作品のおよそ10年後には第二次世界大戦が起きてしまいます。
フレデリックの平和を願う叫びは届かなかったわけです。
けれど、今でもこうして作品を見られることは、そのまま教訓として生かせることでもあります。
多くの方が本作を見て語り継いでいくことで、フレデリックの望んだ世界平和はまだ達成できるのかもしれませんね。