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【レビュー】セイビング・レニングラード 奇跡の脱出作戦(ネタバレあり)

レニングラード包囲戦
それは第二次世界大戦時に起きたドイツ、ソ連間で行われた戦闘のひとつです。
名前の通りドイツ軍がソ連の都市レニングラードを包囲したという出来事で、レニングラードは900日近くを耐え抜き都市を守ったという歴史を持っています。
そんな包囲戦が起きる直前、レニングラードから多くの人々を救ったエピソードを映画化した作品が『セイビング・レニングラード 奇跡の脱出作戦』です。

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ストーリー

1941年4月。
ソ連第2の都市レニングラードはドイツ軍に包囲されていた。
200万人の市民が食料危機に見回れる中、唯一の逃げ道はラドガ湖を渡ることであった。
しかし、湖を渡れるのは一隻の古い船だけであった。

感想

戦争映画とはたいてい、史実をもとにしているからか長丁場となってしまうのが常です。
しかし、本作は90分弱。「薄っぺらい内容になるのでは?」と思いつつ鑑賞しました。
たしかに内容はレニングラードナチスにより包囲される直前の話(1941年)で、戦場よりも市民の脱出がメインとなっていました。
しかし、戦火が迫る市民の恐怖をしっかりと描いていたのは面白かったと思います。
国vs国の大きな戦いなんかは、これまでの作品でも多く描かれてきました。
それだけに、こうした制作国(ロシア)で起きた事象をテーマに据えた作品というのは、珍しくて新鮮な気持ちで鑑賞できたわけです。
レニングラード包囲戦そのものは知っていても、その影響で市民がどうなったのかなんてあまり考えませんからね。

本作ではそうした市民の様子を3つの視点から描いていました。
1つ目は唯一の逃げ道である湖からの脱出船、2つ目は襲い来るナチス兵を食い止める戦場、3つ目は戦火の迫る街中でした。
面白いのがこれら3つの視点で登場する人物たちは、つながりを持っていることです。
例えば、脱出船に乗るコースチャとナースチャのカップルは、戦場でキーパーソンとなるナースチャの父親と砲兵隊の曹長とつながりを持っています。
戦火の迫る街では、戦場にいる夫と船に乗った娘(ナースチャ)の母親が街を捨てられず思い出に浸る様子が描かれています。
このような登場人物同士のつながりは、視点の切り替えが多用されていてもストーリーを追いやすく効果的でした。
レニングラード包囲戦直前にレニングラードで生きてきた人々がどのような思いでどのような運命を辿ったかがしっかりと伝わってきました。

さて、そんな本作ですがメインストーリーはコースチャとナースチャの波乱に満ちた恋路でした。
序盤から入れ違いになって片方が船を乗り過ごしそうになったりと、前途多難な雰囲気を醸し出していましたが、案の定、話が進むにつれてこじれていきます。
コースチャが大佐の息子であることから戦場から逃げたと非難されたり、内務人民委員部に所属するペトルーチクに目を付けられ軍法会議に掛けられそうになったりと、狭い船上をフルに活用したドラマを展開していました。
で、これなにかに似ていると思ったら『タイタニック』に少し似ているんですね。シチュエーションといい、シリアス展開といい。
そのため、ドラマも面白くないわけがありません。人の感情がぶつかり合い、こじれていく様を上手く描写していました。
最後には、ナチス軍からの攻撃を打破することによって、それらの人間ドラマに決着を着けるのですから綺麗にまとめていたと思います。(ナチスの戦闘機を撃墜してからトントン拍子に全てが丸く収まるのは若干都合が良かったですが、だらだらと続けるよりはいいまとめ方だったかと)
戦争をきっかけとしつつ、人間ドラマをメインに置いていたのは取っつきやすく良かったです。


実際に起こったレニングラード包囲戦をベースにそこから逃れる人々のドラマを見せていた本作。
戦争描写もしっかりとされており、公開当時に公開館が少なかったのがもったいない作品でした。(おそらく東京と大阪しか公開されてないと思います)