【レビュー】トゥルーマン・ショー(ネタバレあり)
現在公開中の『ソニック・ザ・ムービー』での出演によって話題となっている俳優がいます。
その俳優とはジム・キャリーです。
『マスク』(1994)や『ケーブルガイ』(1996)、『ライアーライアー』(1997)などで怪演を見せました。
そんな彼が1998年に主演を務め、キャリア最高とも言える演技を見せたのが今回レビューする『トゥルーマン・ショー』です。
ジム・キャリー演じるトゥルーマン・バーバンクのリアルドキュメンタリーのような体で始まる本作。
なんの変哲もない一般市民のトゥルーマンの日常を追っただけに見えるその始まり方は、正直「ここからどうやって面白くなるんだ?」と思いました。
しかし、少しずつ彼が監視されていることが分かっていきます。しかも、大勢の人からテレビ番組のように。(実際にテレビ番組ですが)
そうして見ると、監視カメラから捉えたようなアングルも、トゥルーマンを盗撮したかのようなアングルも全て納得できてしまいます。
で、なかなかチャレンジなのが、この「トゥルーマンの様子はテレビ放送されている」というのを安易にラストのどんでん返しに持ってきていないことです。
早い段階から(なんなら冒頭から)、トゥルーマンの姿がテレビで放送されていることを明確にしていました。
これにより、トゥルーマンが真実へ近づいていく物語を純粋に楽しめたと思います。
また、プロデューサーである、クリストフ側の視点から世界観を説明させるなど、常に興味を抱きながら見続けることのできる展開を作り上げていたのも利点です。
奇抜な練られた設定で、笑いを取りながらハラハラドキドキさせる展開は一度ならず、二度、三度と楽しめる内容になっていました。
そこまで本作に惹き付けられた理由は、トゥルーマンを応援したくなるからです。
ユーモアたっぷりで陽気なトゥルーマンが、破天荒な方法で真実へ挑む姿には魅力を感じずにはいられませんでした。
なにより、その行動が超必死。
車を暴走させたり、人を押し退けて進んだり、とにかくがむしゃらに挑んでいくんですね。
そんな必死な姿を見せられたら応援しないわけにはいきませんよ。
また、クリストフという敵役(悪党という意味ではなく主人公と相対する立場)がいることによって、正しい行動をしようとするトゥルーマンを応援したくなるというのもありました。
気づけば、作中のテレビ視聴者と同じように一喜一憂している自分がいました。
トゥルーマンという、魅力に満ちたキャラクターがいるからこそ、本作は面白くなっていたのだと言えるでしょう。
そんなトゥルーマンが魅力的だったのも、演じたジム・キャリーの演技力が素晴らしかったです。
ホームドラマで見るような朝の挨拶から始まり、一般市民から周りの異変を察知し困惑する姿まで、さまざまな表情を見せてくれます。
特に車で暴走を始めるシーンのテンションはぶっ壊れていました。
トゥルーマンが精神的におかしくなりつつあることを理解させる、いい意味で狂った演技でした。
本作の冒頭でクリストフはテレビ放送に対して「役者の演技には飽きたから演じないありのままの人生を放送することにした」というコンセプトを挙げていましたが、ジム・キャリーの演技はまさにその"ありのまま"だったと思います。
ラストシーンでのトゥルーマンの去り際には拍手を送りたくなるような、そんな見事な演技でした。
まるでジム・キャリーのために作られたかのような役と脚本に、彼がしっかりと演技で答えていた本作。
終わった後に「もしかしたら自分の人生も…?」と考えて楽しめるのもまた面白いです。
トゥルーマンを撮影するテレビ番組スタッフの行動を私たちが見るという、文字に起こすとなんともややこしい設定は映画だからこそ、単純に楽しめるのでしょう。