【レビュー】エクストラクション(ネタバレあり)
「スパイに私情は厳禁」
素人の私たちでも知っている常識です。
しかし、スパイも人間。家族の命が危険に晒されれば私情に動かされるのも仕方がないのかもしれません。
そんなスパイが私情に振り回されるのが今回レビューする『エクストラクション』です。
<h3>あらすじ</h3>
核ミサイルの発射コードをもハッキングできてしまう機械「コンドル」。
その護衛をしていたレナード(ブルース・ウィリス)は「コンドル」ごと拉致されてしまう。
CIAのデスクワーカーである息子のハリーは、父親を助けるために単身行動を始める。
<h3>【感想】身勝手なスパイたちの暴走物語</h3>
冒頭にも書いたように、スパイに私情は厳禁というのが通常の考え方。
しかし、本作ではほとんどの人間が、自分の感情、もしくは思惑で動いていました。
スパイなのに暴行、恐喝、器物破損もろもろ犯罪を犯しながら真実へ近づいていくのはもはやスパイというより無法者。
これを人間味として取ることができれば良いのですが、個人的にはあまりそう思えませんでした。
というのも、どの人物も人間味とかいう域を越えて身勝手でしかないんですね。
主人公のハリーは、世界がヤバい状況なのに父親を助けるために命令違反。
その父親レナードは妻を殺したロシアマフィアをおびき寄せるために世界を危機的状況に陥れるという無茶苦茶さ。
とにかく勝手過ぎます。
そのため、どのキャラクターにも感情移入がほとんどできませんでした。
むしろ、なにかしら手痛い失敗をして欲しかったくらいです。
しかし、アクション映画でそんな展開が起こるはずもなく、ご都合主義でハリーたちの狙った通りに事が運んでいくというモヤモヤした思いだけが残りました。
さらにムカつくのが、ハリーのせいでCIAは混乱状態に陥っているにも関わらず、当の本人は元カノでCIAエージェントのヴィクトリアといちゃついていたりすることです。
で、全てが終われば命令違反をしたのもチャラにされ、デスクワークから現場仕事へ出世へ。
それでいいのかCIA。
こうした人間性に難ありな登場人物たちの暴走がネックでした。
そのため、イケメン若手俳優ケラン・ラッツ、俳優兼格闘家のジーナ・カラーノ、お馴染み不死身のおっさんブルース・ウィリスという個性的な3人がメインを張ってもいまいち盛り上がらないという始末でした。
アクションや派手なシーンなんかはそれなりに見応えがあっただけに、キャラクターのせいで入り込めなかったというのは残念。
深いことを考えず、彼らの身勝手な行動にツッコミを入れつつ見れば楽しめたのかもしれませんね。
また、ストーリー全体を通して、勢力図がすごくごちゃついていたように思えました。
「あれ?こいつ敵?味方?」となるような展開もあって、せっかく盛り上がるシーンでも純粋に楽しめなかったです。(あくまで個人的な感想で、もしかしたら自分に読解力がなかったのかも?)
CIA絡みの物語とはいえ、目指しているのは「父親奪還(ついでに「コンドル」奪還)で世界を救う」です。
そんな少しのシリアスとアクションがあれば事足りるような内容だったわけですし、もっとシンプルにまとめて良かったと思いました。
ブルース・ウィリスを出汁に興味を抱かせる本作。
しかし、蓋を開けてみればアクションくらいしか見所のない(しかもブルース・ウィリスのアクションはほとんどなし)ガッカリ作品でした。
いい俳優を揃えていただけに歯痒い思いです。