【レビュー】スケアクロウ
男二人のロードムービー
「旅は道連れ世は情け」
そんなことわざがあるように、旅には相棒の存在が欠かすことができません。
本作でもそれは同じで、マックスとライオネルこと"ライオン"の二人が、ピッツバーグに向かうのを眺めているのが楽しい作品でした。
しかし、二人はいわゆる凸凹コンビ。普通に生活していれば、まず知り合いにならないような正反対の性格をしていました。
そんな二人が知り合いになる冒頭のシーンは印象的。
セリフもなく二人が知り合いとなっていく流れはセンスは素晴らしく、一気に作品に引き込まれました。
その後の二人の関係の描きかたも秀逸です。
ライオンがマックスを支え、マックスは自身の生き方を見直していく……
そうして築かれていく関係は劇的ではないもののリアリティがあります。
多くの言葉を交わさずとも、二人の信頼関係が強固なものへとなっていくのは見ごたえがありました。
それだけに、マックスがライオンが必要だと自らの思いを吐き出すシーンは感動的でした。
ロードムービーということもあって、二人が旅をしている姿しか描かれていません。
けれど、それを通して築かれていく関係はロードムービーの本質が描かれているように思えました。
ジーン・ハックマンとアル・パチーノといえば70年代映画を彩った俳優といっても過言ではありません。
本作ではそんな二人の魅力がしっかりと生かされていました。
ハックマンは、無愛想で融通の聞かない男マックスを演じていました。
一見すると、終始無口で演じ易そうな印象を受けますが、感情の細かな変化が多い難しいキャラでした。
それを、つかみ所のない面倒くさい男から、旅立ちを応援したくなるキャラへと変化させていたのです。
キャラに命を吹き込む演技。それを成し遂げていたハックマンの演技は見事でした。
パチーノも期待以上の演技を見せていました。
初めはただのひょうきん者で、これだけでも愛着の沸くようなキャラでした。
しかし、更生施設で暴行を受けてからは精神的に不安定になります。
以前と変わらないひょうきん者のようで、どこかほころびの見えてくる演技には驚かされました。
そして終盤の崩壊。
その痛々しさは分かっていても心苦しいものがありました。
最初から最後まで感情移入をしてしまう魅力的なキャラを演じきっていたと思います。
ロードムービーということもあり、本作ではクレイジーな演技や感情を爆発させる演技はそうありませんでした。
しかし、2人による演技はそれぞれのキャラクターを好きになれる演技を見せていました。
より人間味のある表現力。それが彼らの見せた素晴しさでした。