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【レビュー】ハンター(2011)(ネタバレあり)

ハンターと聞くと冷酷かつ残忍なイメージがありますよね。
しかし、動物の命を取る彼らだからこそ最もその価値を理解しているとも言えるのかもしれません。
そんなハンターを名優ウィレム・デフォーが演じたのが今回レビューする『ハンター』です。

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この作品、アマゾンプライムのおすすめ映画として2週間ぐらいずっと出続けていたので見てみました。
で、率直な感想。

なんてものをおすすめしてくるんだアマゾンプライム

いや、たしかに作品は悪くないです。
ハンターであるマーティン(ウィレム・デフォー)が、バイオ企業「レッドリーフ」からの依頼でタスマニアデビルを追い求めてオーストラリアの森林地帯へ行くというストーリーで、森林保護vs森林伐採の争いに巻き込まれたり、宿泊所として住み込む家の未亡人ルーシーとその子供2人と仲良くなったりと、見所もありましたから。

ただ、いかんせん終わり方に救いがなさすぎます。
ルーシーたちが待っていた父親は既に山中で亡くなっており(「レッドリーフ」の陰謀によって殺害)、さらに彼女たちも焼死させられるというなんとも非情な展開には胸を締め付けられる思いでした。
マーティンが唯一生き残っていたルーシーの息子ジェイミー(またの名をバイク)と再会をすることで、若干希望は感じさせていたものの、ハッピーエンドかと言われると首をかしげるしかありません。
結局、登場人物全員が不幸になって、諸悪の根源である「レッドリーフ」が打撃を大きく受けたという事実に救いを感じるしかないのでしょう。

で、こうした展開になってしまうのは絶滅危惧種であるタスマニアデビルに手を出したから。
作中でもルーシーが「争うくらいならいっそ絶滅してくれた方がいい」と言っていたように、不毛な争いが勃発し、誰も得をしない結末を迎えるわけです。
マーティンがタスマニアデビルに遭遇して撃ち殺してしまったのも、それまでの展開を見ていると自然なことのように思えてハンターという立場の理不尽さを思わせましたね。
絶滅危惧種を追い立てることはこんなにも不毛なんだ!」という、メッセージめいたものを感じさせる内容だったと思います。

そんな狩りがメインな作品なだけに、上映時間の4~5割はマーティンが山の中で活動をしている様子が描かれています。
山の中を探索したり、食事となる獲物を狩ったり、トラップを仕掛けたりと、とにかく黙々と作業をしていたのが印象的です。
個人的には、そんな映像でも割とワクワクできたので、満足度は高めでしたが「これじゃあネイチャードキュメンタリーみたいだな」と思ったのも事実でした。

で、そこへアクセントを加えていたのがウィレム・デフォーです。
なんだか年を取るごとに味が出てカッコよくなっていく彼に、本作の孤高なハンターという役柄はとても合っていました。
それだけに、何をしてても絵になってしまうんですね。
森を歩こうが、トラップを仕掛けようが、とにかく渋くてカッコイイ!
一方で、宿泊先の子供たちに振り回されたり、父親役として面倒を見たりと、孤高とは真逆な一面を見れるのも素敵でした。
彼の魅力の一つでもある青い目が、至る所でその美しさを見せていたのが印象的でもありました。

スッキリ爽快とはいかず、終わった後に絶滅危惧種への経緯と虚しさを残していく本作。
とはいえ、ウィレム・デフォーの哀愁漂う姿を見ていると、その虚しささえも美しく見えてしまう不思議さがありました。
人に強くはオススメしたくありませんが、デフォー好きには絶対に見てもらいたい作品でした。