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【レビュー】テキサス(ネタバレあり)

テキサス州といえばアメリカの土地。
そんなイメージが今や定着しています。
しかし、1836年から1845年まではテキサスは「テキサス共和国」というひとつの国でした。
そんなテキサスがアメリカに統合されるまでをテーマに、面白可笑しい西部劇を描いたのが、今回レビューする『テキサス』です。

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ストーリー

スペインの貴族ドン・アンドレアは、アメリカ人女性フィービーと結婚をするためアメリカを訪れる。
しかし、フィービーが戦争前に騎兵隊の一人と婚約していたことから結婚式に反対するため騎兵隊を引き連れて乗り込んで来る。
ドンは騎兵隊らと揉み合う内に、事故で元婚約者を突き飛ばしてしまう。
元婚約者はそのまま帰らぬ人に。騎兵隊らはドンを殺人犯として追い始めた。
追い詰められたドンはフィービーと落ち合うことを約束し、アメリカ合衆国に統合されていないテキサスへと逃げ出す。
その道中、彼は用心棒を探していたサムに雇われるのであった。

感想

西部劇といえばアメリカやメキシコ(あるいはマカロニ・ウエスタンのイタリア)がメジャー。
そこへ、あえてスペイン人が、しかもフランス人であるアラン・ドロンが演じる形で登場するというなんとも話題に事欠かない本作。
しかし、それがおかしいかといったらそうでもなく、アラン・ドロンの濃いイケメン顔がスペイン人のイメージともそこまでかけ離れておらず、また持ち前の演技力でスペイン人貴族としての誇り高い性格も表現しており全く違和感はありませんでした。

その相棒(?)となるサム・ホリスを演じるディーン・マーティンは、コメディに長けていることもあってか、ドン(アラン・ドロン)をいい感じにサポート。
スペイン貴族のためにズレた行動をするドンにツッコミを入れつつコミカルなリアクションを見せる演技の幅の広さはさすがでした。

そんな二人の掛け合いが魅力的な本作。しかし、それが成り立つのはひとえに作風がコミカルだからです。
ドンが騎兵隊に追われる状況(捕まれば絞首刑)やコマンチ族に狙われる恐怖など、常に命の危機があるにも関わらず、コミカルなのです。
で、そのコミカルさを構成するのがやはりキャラクターでした。
上述した二人の掛け合いはもちろん、なにかと頼れる男に弱いフィービーや、サムの相棒でボケにたまに乗ってくれるクロンク、コマンチ族に狙われドンを愛するあまり嫉妬深くなるロネッタ、などなど個性的なキャラクターばかりなんですね。
個人的にはコマンチ族の族長の息子がドジをやらかして大変なことになるのが、周りの「なにやってんだ……」という反応も含めて笑えました。
あんな微笑ましいコマンチ族なら仲良くなれそうな気もします。

そんなコミカルな作品なだけに、西部劇のお約束、決闘シーンも笑えます。
まず、ドンが決闘を申し込むのに手袋がないからビンタで済ますという流れから笑いました。
で、実際に決闘となると町の端から中央に向けて近づいていく早打ち勝負という奇想天外なものを見せるのですからその間抜けな構図が笑えます。
作品全体としてそうでしたが、基本下ネタとかなく、キャラクターの個性や西部劇のテンプレートを壊すようなユーモアで勝負していたのが好印象でした。
そもそも序盤から人が死んでいるのにネガティブな感情を持たせず見せるのですから雰囲気の作り方が上手いというしかありません。
西部劇はカッコいいと憧れこそすれ、実際に行ってみたいと思える世界観はなかなかありません。
けれど、本作のような西部時代なら行っても楽しめそうだなと思える優しい世界でした。


笑える西部劇の世界を見事に作り上げていた本作。
アラン・ドロンの初めての西部劇にも関わらず、このような異色の作品にしていたのはなかなかのチャレンジであったと思います。
アラン・ドロンの魅力はもちろんディーン・マーティンの魅力も感じられる素敵な作品でした。