【レビュー】ダンス・ウィズ・ウルブズ(ネタバレあり)
ケビン・コスナーといえば俳優というイメージがあります。
そんな彼ではありますが、これまで3度監督を務めています。
その内で初監督作品となるのが、今回レビューする『ダンス・ウィズ・ウルブズ』です。
もちろん主演もコスナーが務めています。
本作を語る上で書いておきたいのが、作品のジャンルについてです。
1863年、南北戦争の真っただ中を舞台に、北軍中尉ジョン・ダンバーと現地に暮らすインディアン族との絆を描いた内容は、西部劇のように思えます。
けれど、ジョンがインディアンの人々と距離を縮めていくアットホームな温かさや、彼が一族の一人"ダンス・ウィズ・ウルブズ"(狼と踊る男)として受け入れられる様子などは西部劇からは遠いイメージがありました。
そのため、本作のジャンルを挙げるとするならドラマ、あるいは歴史ということになるでしょう。
そんなエンタメ要素よりドラマ要素に重きを置いた作品ですが、作品時間はなんと181分!(全長版では236分)
正直、見る前は「こんな長い映画で退屈しないか?」と不安がありましたが、その心配は杞憂に終わりました。
「インディアンとの異文化交流」これがなかなかに楽しめたのです。
インディアンの地で言葉も通じない、出会えば即攻撃されるという状況下で、少しずつ距離を詰めていくのはワクワクドキドキさせられます。
単語やジェスチャーを交えつつ、互いの理解を深めていく様子は、人間の本質でもあるコミュニケーションを取る大切さも学ばせてくれました。
相手に伝えようとする意思とそれを受け取ろうとする意思。その両方があって初めてコミュニケーションです。
さらに面白くなるのが、ジョンがインディアンのコミュニティに受け入れられるようになってからでした。
これまで知ることのなかったインディアンの衣食住に触れる驚きと、楽しさは画面越しにも伝わってきます。
もちろん、全てが万事順調とは行かず、勝手に物を取られたり、意志疎通が若干ズレていたりもありました。
けれど、そうした手探り感もまた一興だったと思います。
また、この作品の転換期ともなるバッファローを狩るシーン。
ここでは、インディアンたちが弓を、ジョンは銃を使い共闘するという、他の映画ではまず見ることのない構図を見ることができます。
バッファローたちの躍動感も手伝って、本作のハイライトシーンのひとつと言えました。
こうしたインディアンとの絆が築かれていくのが楽しい作品ではありますが、終盤は史実の通り淘汰される展開へ。
ジョンが所属していた北軍が押し寄せてきてインディアンたちは退避せざるを得ない状況に陥ります。
ここで印象的であったのが、ジョンの扱いでした。
北軍の兵士たちはインディアン装束に身を包んでいたジョンを敵として見なしていました。(攻撃もしていないのに)
このやり取りで疑問となってくるのが、インディアンとはなんなのか。
姿形が伴えばインディアン?
アメリカ軍に反抗する者がインディアン?
作品を見ていると、同じコミュニティの人間に敬意を払って接し、文化を大切にする、そうした尊い思想こそがインディアンの本質なのだと感じられました。
そんな素敵な思想を持ったインディアンをアメリカ軍が一方的に追い立てることで、作品は終わりを迎えていました。
「本当にこれで良かったのか?」と考えさせられる内容は、アメリカの歴史を振り返り、学ぶには最適であったと思います。
本作で描かれるインディアンへの偏見は、現在にも当てはまります。
人種差別や性差別など、相手は変われど似たような事象は起こっています。
そうした課題を乗り越えるため、ジョンが取った行動は今の時代に見てもセンセーショナル。
学ぶことの多い作品であったと思います。