【レビュー】バーバラと心の巨人(ネタバレあり)
人には誰しも戦うべき時があります。
それは何かを守るべき時であったり、立ち向かわなくてはならない時でしょう。
今回レビューする『バーバラと心の巨人』では、一人の少女バーバラが巨人という強大な敵と戦うべき時を迎えます。
と、まるでファンタジー作品かのような紹介をしましたが、本作の巨人はタイトルにもあるようにバーバラの心の中にいるだけです。
ここで注目したいのが本作の原題。
『I Kill Giants』(私は巨人を殺す)というタイトルは、見てもらうと分かるように、巨人=精神的な敵とは明かしていないんですね。
ポスターヴィジュアルも日本ではポップな感じなのですが、海外ではファンタジー風味なものになっています。
日本ではこうした、内容をそれなりに説明するタイトルをつける傾向があるんです。
それが悪いこととは思いませんが、本作に限って言えば、見る前の心構えが全く変わってきましたね。
そして肝心の映画の内容です。
原題が巨人と戦うことを匂わせる内容であるだけに、冒頭は本当に巨人がいるかのような体で話が進んでいきます。
そうした中、バーバラの不安定な精神状態がもたらす行動や、周りからの評価などから、だんだんと巨人が彼女の精神が生み出したことを匂わせていく流れはよくできていました。
そのため、バーバラへの精神的な負担がリアルに描かれていたのも印象的でした。
両親がいないことから起きてしまう姉との不和。
巨人との戦いに没頭するあまり奇行にに走ってしまい変人として扱われるレッテル。
唯一の友人であるソフィアとの仲違い。
痛々しく描かれるそれらの要素は、バーバラの立ち向かうべき世界がいかに強大であったかが感じられました。
そんな強大すぎる敵と対峙するためか、バーバラの見ている世界はかなり独特でした。
先祖への敬意のためにウサ耳カチューシャをつけ、敬愛する野球選手ハリー・コヴェルスキーの名を付けた武器をポシェットに入れて持ち歩くという、常人には考えつかないような世界を見ているんですね。
さらに、巨人を誘き寄せるための罠を設置したりと、ある意味充実した毎日を送るバーバラ。
この独特な世界観はよくできて引き込まれました。
少なくともバーバラへの感心と興味は早い段階から持つことができましたね。
バーバラの見ている世界をそのまま表現したCGがまたいい感じでした。
本当にファンタジー映画で使われるようなガチなCGを用いているだけに、臨場感が高いんですね。
それを見ていると、バーバラがいかに本気で世界に立ち向かっているのかが感じられるようでした。
単純に迫力があって楽しいというのもありましたね。
で、巨人との決着ですが、バーバラが単身挑むことで打ち倒し、ハッピーエンドを迎えました。
この引き際が個人的には素敵だったと思います。
思春期に抱く悩みなんてそのうち自然と乗り越えられるようになるものですからね。
勝手に悩んで、他人に迷惑掛けまくって、勝手に解決する。それが思春期というもの。そして成長というものでしょう。
そんな悩みとの付き合い方と成長をリアルに見せていた引き際はよくできていたと思います。
バーバラが大人への一歩を踏み出すための戦いを描いていた本作。
彼女の見せる壮大で等身大な物語は、暖かく見守っていたくなる美しいものでした。