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【レビュー】ジュディ 虹の彼方に

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感想

ジュディ・ガーランドの日本での知名度はどのくらいのものなのでしょうか?

私は恥ずかしながら知りませんでした。

オズの魔法使い』のドロシー役で「オーバー・ザ・レインボー」を歌った女性と聞いて、ようやくピンときたくらいです。

そんな彼女の晩年を、回想を交えつつ描いたのが本作『ジュディ 虹の彼方に』でした。

 

内容としては、半分音楽映画で、半分伝記映画といった感じ。ドラマチックでありながらもジュディの歌う名曲の数々を楽しめるのは映画館で見る価値がありました。

そんな二つの要素をよりよいものにしていたのが、主演のレニー・ゼルウィガーの演技でした。

第92回アカデミー賞主演女優賞を獲得したのも納得の演技を披露。ジュディが抱える、歌うことへの不安、ファンとの距離、子供との関係などを見事に表現していました。

舞台上でのハツラツとした姿と、舞台裏での憂鬱とした姿の切り替えが印象的。本当にうつ病不眠症を患っているかのような顔つきや言動には驚かされました。

 

レニーのもう一つ凄い点が歌唱力にありました。

本作での歌唱シーンも全て彼女が歌っていることは話題となっていましたが、その声量はプロ顔負けのパワフルさでした。

野次を飛ばす観客がいながらも、毎回のように満席であることにも頷ける歌唱力。ジュディを演じる上で、最もリアルに再現されていた部分とも言えるかもしれません。

 

そんな歌唱シーンの中でも、記憶に残っているのがラストシーンの「オーバー・ザ・レインボー」を歌うシーンです。

ジュディ・ガーランドを象徴する歌曲であることはもちろんなのですが、演出が素晴らしすぎました。

それまで観客に野次られ、誰からも自身の気持ちを察して貰えずに挫けていたジュディ。そんな彼女が歌えないと言う中で、観客たちが後を引き継ぎ、拍手を送るというのはズルい演出でした。感動しないハズがありません。

本来なら、音楽映画で最後の曲を観客が歌って終わりなんてありえないことです。

けれど、それを納得できるラストシーンとしたのは、それまでにジュディの苦悩を描き続けてきたからこそ。彼女を歌手としてではなく、普通の一人の女性として見せていたことで成立した演出だったと言えるでしょう。そこが見事でした。

 

そんな感動もつかの間、モノローグでジュディがイギリス講演の半年後に亡くなったことが明かされるのですから衝撃的です。

けれど、彼女が望んだ「忘れないで」という願いは、今こうして映画となることで叶えられています。

歌手であり、女優であり、一人の女性であったジュディ・ガーランドの素晴らしさは本作を通じて語り継がれていくのでしょう。

 

豆知識

ジュディ・ガーランドの命日は、1969年6月22日(47歳没)、レニー・ゼルウィガーの出生日は1969年4月25日(映画撮影時には48歳)という縁があります。

 

ジュディ・ガーランドを取り扱った映画は本作で2作目。1作目の『ジュディ・ガーランド物語』(2001)は、BS-2にて2003年5月29日と30日に前後編でテレビ放送。(本来は2時間50分でひとつの作品)

地上派では、NHKにて前編が2003年10月4日深夜0:40~2:15に、後編が2003年10月5日深夜1:00~2:35に放送されています。

現状、日本語字幕・吹替え収録のDVDは発売されておらず、英語などで見るしか方法はないようです。

本作を機に、再放送、あるいはディスク化を期待しましょう。

 

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