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【レビュー】パヴァロッティ 太陽のテノール(ネタバレあり)

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ストーリー

"神に祝福された声"、"キング・オブ・ハイC"など称されるテノール歌手ルチアーノ・パヴァロッティ
彼のテノール歌手としての人生を、友人であり、テノール歌手の仲間でもあるプラシド・ドミンゴホセ・カレーラスらと1990年にローマの遺跡カラカラ浴場にて開催した野外コンサートを中心に描いていくドキュメンタリー。

感想

オペラにもテノール歌手にも興味のない私ですが、パヴァロッティという名は聞いたことがあります。
そんな興味本位で鑑賞したわけですが、見て良かったと思える出来栄えでした。

まず、声を大にして言いたいのがオペラシーンの素晴しさ。
冒頭にも書いたように、オペラ知識なんてない私ですが、それでもハッキリと言い切れるパヴァロッティの歌唱力の凄さ!
本編115分中3分の1以上(体感)をオペラシーンに費やした内容は充実。
ドキュメンタリーでありながらも映画館で見た満足感を得られるのはひとえにパヴァロッティの歌唱力があるからでした。

もう一つ良かったのが、オペラを知らなくても聞いたことのあるような有名な曲を聞けることです。
「オ・ソレ・ミオ」や「誰も寝てはならぬ」辺りは、きっと誰しもが聞いたことがあるハズ。
それを確かな歌唱力で歌っているのを目の当たりにするわけですから興奮しないわけがありません。
そうした、オペラ初心者でも楽しめるのが本作の良さであったと思います。



オペラシーン……というよりも作品全体として魅力的であったのが、全て実際の映像を使用していたこと。
昔の偉人なんかのドキュメンタリーだと、再現あるいは「○○の公演が素晴らしかった」と紹介するだけに止まってしまいます。
しかし、パヴァロッティは1935年~2007年まで生きた著名なテノール歌手です。
そのため、映像や音声がたくさん記録されていました。しかも、見れるくらいの画質、音質で。(見た感じ、おそらく品質改善を施しているのだと思います)
中にはパヴァロッティ自身がその音楽性を語る映像なんかもあって、つくづく記録することの大切さを思い知らされました。



そしてこのパヴァロッティの音楽性や人柄が分かるのが、ドキュメンタリーの良さでもあります。
彼自身の話はもちろん、彼を支えていた公私の知人からのインタビュー映像は、実際の歌唱シーンを交えながらということもあって、見ごたえがありました。
中でも印象深い話が2つ。

1つ目は、パヴァロッティの歌唱力の凄さについて。
なんでもテノールには"ハイC"(3点C)なる高音があるそうです。
それを出すのは至難の技。それを1度の曲で何度も出すことが出来るのがパヴァロッティの凄さのゆえんだと語られていました。
で、実際にパヴァロッティが"ハイC"を出している映像を見ることが出来るのですが、たしかに凄い。
聞いているこちらが息切れしてしまいそうになる映像でした。
このように、彼の凄さを映像を交えて説明するというのは、感覚として理解ができる効果的な演出であったと思います。

2つ目は、パヴァロッティテノール歌手をしていた理由について。
彼は、自身の歌声が神からの授かり物だと考えており、それを多くの人々に聞かせることこそが自らの使命だと考えていました。
そのため、無償のチャリティライブなんかを率先して行っていたんですね。
才能に溺れることなく、人の幸せのために歌うその姿はまるで聖人のよう。
多くの関係者たちの声を通して、彼への興味と好感度が高まり、作品への没入感をより強くさせてくれました。

本人や知り合いによるインタビュー映像は、文字で見る以上にパヴァロッティという人物を知ることにつながっていたと思います。
ドキュメンタリーである意義を存分に生かしていたと言えるでしょう。



音楽と人の声、二つのパートからパヴァロッティの魅力を描いていた本作。
これを見て、彼に対する好感を抱かない人はなかなかいないでしょう。
それを考えると、パヴァロッティ愛に溢れた作品だったと言えますね。