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【レビュー】ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏

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才能あるアーティストとは、たいてい独特な感性を持っていたりするものです。

本作『ふたりの』に登場するローラとサヴァンナもまたその感性を持ち合わせていたと言えるでしょう。

ただし、彼女らの場合はその"独特"がかなり強かったと言えます。


本作は『サラ、いつわりの祈り』の作者であるローラが作り上げた、架空の作者J.Tリロイを偶然知り合ったサヴァンナがあたかも実在する人物かのように演じる作品でした。簡単に言うなら逆ゴーストライターみたいなものですね。

サラ、いつわりの祈り』については『作家、本当のJ.Tリロイ』という作品を見れば分かるかと思います。

作品の内容をアニメーション化し、ローラ自らが解説などもしているドキュメンタリーです。


そんな架空の作家を巡る本作なのですが、想像以上に楽しめました。

強盗や傷害といった殺伐としたサスペンスでないにも関わらず楽しむことが出来たんですね。

その理由は、ひとえにJ.T.リロイという人物の魅力に惹き付けられるからだと思います。

何度か書いたように彼は架空の存在。

では、彼に惹き付けられるとはどういうことかというと、作品を通して彼の存在が感じられるのです。

ローラが過去に経験した出来事をベースにして生れたたアバターであり、サヴァンナが演じることで生まれた肉体でもあるリロイは、人間よりも人間らしい存在だったと思います。

作品を見ているうちに、本当にリロイの人間性や意思が見えてくるのですから凄いものです。


で、そうした感覚に陥ってしまうのはローラ役のローラ・ダーンサヴァンナ役のクリステン・スチュワートの活躍があったからでしょう。

ふたり共既にキャリアは十分すぎるくらい積んでいる俳優だけあって、表現力が豊かなんですね。

作中でローラが言っているように、リロイという存在がふたりの間を行き来しているかのよう。繊細で気まぐれ、つかみ所のない存在を見事に演じていました。


ローラの凄惨な過去から生まれたJ.T.リロイという存在。

彼はサヴァンナによって肉体を持ち、多くの人間に認識されることとなりました。

ミステリアスなエピソードと肉体、たったそれだけで架空の存在でも人に認識させることができるというのは奇妙であり、面白い話でした。