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【レビュー】スピリッツ・オブ・ジ・エアー

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空は青く美しい。

それは当然のことであるがために忘れがちです。

そんな空の青さを、美しさを思い出させてくれるのが今回レビューする『スピリッツ・オブ・ジ・エア』です。

 

この作品、設定がなかなかに独特。

荒廃した砂漠の世界で、何らかの理由で追跡者に終われるスミスが砂漠の果てにある山壁を越えるため、空に思いを馳せる男フェリックスと共に飛行機を作るというストーリーです。

 

そうした独特な世界観ではありますが、表現力豊かな演出から受け入れやすかったのが印象的。

冒頭の荒廃した砂漠の世界を見せるシーンだけを切り取っても、その素晴らしさは感じ取れます。

画面の下部を占める砂漠の茶色と上部を占める空の青の美しいコントラストはそれだけでも画面に釘付けにさせられます。

そうして惹き付けた上で、歩く人影、ボロボロになった看板、回る風車、楽器を弾く謎の女と続いていくのですから想像力を掻き立てられました。

興味を惹き、想像させることで世界観を認識させる演出は見事としか言えませんでした。

 

その後に待っているのが、絶望と希望です。

ここで重要な役割を果たしていたのがフェリックスとその妹ベティ。

飛行機を飛ばし、いつかは砂漠からの脱出を夢見るフェリックスと、失敗し絶望するならなにもしない方がいいと考えるベティは、分かりやすい「希望」と「絶望」の象徴でした。

ベティのネガティブさには見ていて何度もげんなりとさせられますが、あの世界の救いのなさを表現するには必要な役割かと思います。

フェリックスとの衝突を描くことで、彼の希望の不屈さを強調もしていましたし、いい意味でも悪い意味でもベティは記憶に残るキャラクターでした。

 

そんな希望と絶望を表現していたのが砂漠と空だったのでしょう。

美しく広がる空と、無機質に広がる砂漠。

それはなによりも雄弁に登場人物たちの状況を表していたと言えます。

それは同時に、スミスの運命もより良いものであることを意味していました。

 

独特な世界観で、希望と絶望を描いた本作。

人間が希望を抱こうが、絶望しようが景観は美しいままであることが、印象的な作品でした。