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【レビュー】テラー・ハウス 堕天使が棲む館

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面白くない、怖くないホラーというのは割とありふれている。
けれど、今作のように「何もない」ホラーというのはかなり珍しいと思う。


内容がただただ薄いのだ、記憶に残すのも難しく、まさに特徴がないのが特徴といった感

じか。

かろうじて記憶に残るとすれば設定だろう。
ホラー映画の脚本家ジョンが間借りした家の三階に謎の老婆がいる、というなんともツッ

コミ所の多い設定だ。
それで貸し出そうとする不動産もアホだし、借りるジョンもアホである。「老婆は絶対に

姿も見せないし、存在も感じさせないから」ってそっちの方が不気味だ。しかも不備があ

るのに定価。

 

そんなわけで、始まるジョンと老婆(とゴキブリの死骸)の共同生活。
当然のことながら様々な怪現象が起こる……と、思いきやその8割がレコードが勝手に再

生されるだけである。残りの2割は物が勝手に移動する。
確かに、現実で起これば「やっぱりヤバい物件じゃないか!」とパニックに陥るが、ホラ

ー映画と考えるといささか地味すぎるのだ。

 

で、何故か不動産に電話するのではなく自分

で対処しようとする。しかも交霊術ウィジャボードを使って。

案の定、なんかヤバい霊を引き当てたジョンは助けを求めるかのように老婆の部屋へ。
そこで初めて、家がヤバくて老婆が部屋から出られなくなっていることを知るのだ。
読んでいても分かるかと思うが、この時点で物語は佳境である。


では、他の時間をどこに裂いているのかというと、隣人とのラブロマンスだ。

ジョンが越してきて、家でアレコレ怪現象があるのを話すうちに意気投合して所謂「そう

いう関係」に発展する。
イチャイチャ、ラブラブ……正直どうでもいい。私はホラーを見に来たのだ。


結局、どうホラー要素に関わってくるのかと思ったら「実は殺されていました」というオ

チであった。
シックス・センス』も驚きのどんでん返しだ。幽霊という描写もないのだから。

最後は全ての元凶であった老婆の娘とジョンが物理的な戦闘に挑むことになるのだが、こ

こまでくるとどちらが勝とうが興味はない。一応ジョンが勝つわけなのだが、それで「ま

た執筆のために新しい家を借りよう」で終わるのだから最後まで印象の薄い作品だ。

 

主人公が脚本家という設定でなんとなく察する人もいるかと思うが、この作品は彼が作中

での体験を通して描いた脚本ということになっている。
いくらなんでも没にするべきだし、没にされるべきだと思う。
この話を映画化しようものなら、それ自体がホラーなのだから。