【レビュー】ジーパーズ・クリーパーズ(ネタバレあり)
ストーリー
とある田舎。そこでは23年間ごとに23日間人が消えるという噂があった。
そこへ帰省する途中、姉トリッシュと、弟ダリ―は、怪しげなトラックに遭遇する。
二人はそのトラックが道中にあった教会へ止まり、人間と思しき袋を捨てているのを目撃した。
もし人間であったら助ける必要があるという考えに至った二人は、教会へ訪れる。
しかし、袋を確認する最中、ダリーは教会の地下へ落ちてしまう。
感想
タイトルは聞いたことがあるけれど、あらすじも詳細も知らなかった本作。
何やら最近シリーズの3作目の話題をチラホラ見かけていたので、これを機に見てみました。
で、この作品モンスターホラーだったんですね。
冒頭では『激突』やら『悪魔のいけにえ』っぽい雰囲気を醸し出していたため、人間がヤバい系のホラーかと思っていたらだんだんと雰囲気変わってきて驚きました。
そんなわけで、恐怖の対象となるのが……名前のよく分からないモンスター。(作中、名前は明かされていませんでした)
「おいおい設定ちゃんとしろよ」とも思いますが、そのミステリアスさがいいのかもしれません。
臭いでターゲットを判別する、車に4,5回轢かれても死なない、蝙蝠みたいな翼が生える、食べた体の一部を吸収できる(心臓が複数ある)、といった謎めいた設定含め、都市伝説のようなワクワクさを感じられますからね。
個人的に良かったのは、モンスターの造形。
CGを使わない特殊メイクによる手作り感溢れる造形は、1980年代~90年代のモンスターホラー味を感じさせます。
鬼のような形相であったり、なんだか全体的にぬめりを感じさせていたり、背中から羽が生えたりと、いろいろと遊び心が見られるのが好印象。
CGでは出せない粗削りさが逆に「23年間ごとに23日間起こる怪事件」という都市伝説のような話に説得力を与えていました。
そんなモンスターに追われるのが、トリッシュとダリーの姉弟。
ホラーで男女っていうとカップルの比率が多いイメージがあるため、意外や意外でした。
しかし、その設定が案外生かされています。
モンスターが死体を隠したのを見て、明らかに好奇心多めで「助けに行こう」とトリッシュに強要していたり、パニックに陥って茫然自失となっていたりと、わがままでトリッシュに支えられながらなんとかやってる弟っぽさを見せているんですね。
もしこれがカップルであれば「こんな弱々しい男さっさと見切りつけちゃえよ」となりますが、姉弟であれば絆の強い家族ドラマになります。
こうして、二人が一緒にいることに納得ができるのですから、姉弟設定というのはあながち悪い判断ではなかったと言えるのでしょう。
そんな姉弟とモンスターの攻防がメインな本作ですが、なかなか面白かったのがフィールドの広さです。
普通、ホラーと言ったらどこか建物内に閉じ込められて追われるという展開が多いですが、本作では田舎町全体を巻き込んでいます
道路上や廃墟と化した教会、バー、警察署など、舞台を次々に変えてモンスターとの攻防を繰り広げていました。
中でも面白かったのが車vsモンスター。
余裕綽々で車の突撃をかわすモンスターと、それを轢き殺すべく前進と後退(バック)を繰り返すトリッシュの攻防はホラー映画であまり見ない特殊な光景でした。しかもトリッシュの容赦なさ。これにはもはや笑うしかなかったです。
最終的に、警察までも巻き込んだ大きな話になるがまた面白い点。トリッシュたちが警察署にたどり着いて安心していたら警察官たちも惨殺される絶望はショッキングでしたね。
ちなみに個人的なハイライトシーンは、この警察署内の攻防で、トリッシュとモンスターが取調室のマジックミラー越しに向かい合うシーンです。
モンスターからは見えているのに、トリッシュからは見えずに近づいていってしまうハラハラ感を煽る演出は見事でした。
ラストシーンのダリー越しにモンスターの目が映る演出なども含めて、見ごたえある演出があったのは楽しかったですね。
現在(2020年8月)までにシリーズ3作が製作されている本作。
そこまで人気が出たのはおそらく、モンスターに魅力があったからなのでしょう。
続編でどのような活躍(?)を見せてくれるのか楽しみです。