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【レビュー】ミッシングID(ネタバレあり)

アメリカにはState ID(ステートID)なるものが存在しています。
身分証といえば免許証が主流ですが、もちろん車に乗らない人もいるわけで……そんな人のために存在しているのがステートIDなわけですね。
要はただ身分を証明するだけのもの。人が人であることを証明し得るものです。
今回レビューする『ミッシングID』は、自身の生まれが別にあったことが判明し、自分が何者なのかを追い求めるサスペンス、ややアクション映画です。


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ストーリー
高校生であるネイサンは、厳格ながらも献身的な両親の支えもあって不自由のない平穏な生活を送っていた。
ある日、高校の課題で消息不明になっている子供について隣人のカレンと調査をしていた所、自分にそっくりな子供が情報サイトに載っていることを知る。
両親に問い詰めようとするネイサンであったが、そこへ突如謎の男たちが襲撃を仕掛けてくるのであった。

 

感想
この作品、公開当初映画館で見ようと思ってパンフレットまで買っていたのに見れなかったという、悲しき因縁を持った映画でした。
で、8年越しにようやく鑑賞。
うん、まあ普通の作品でした。
「映画館で見れば印象が変わるのかな?」とも思いましたが、アクションが少なめなだけに、そこまで盛り上がるかといったら首をかしげるしかありません。

 

とはいえ『トワイライト』シリーズでお馴染みのテイラー・ロートナーが主演を務め、ブレイクし始めであったリリー・コリンズをヒロインに据えていることもあってか、見ごたえはなかなかにありました。
制作側も彼らには並々ならぬ思いがあったのか、役どころもかなり恵まれていた印象です。
ネイサンは、超凄腕エージェントの血を引く青年で、義父(CIAのエージェント)から受けた訓練のおかげで戦闘能力にも長けているサラブレッド。なし崩し的にヒロインともイチャイチャできるという好待遇でした。
そのヒロインであるカレンも好待遇。一般人という立ち位置でありながらも幼馴染であるネイサンのために命を賭けてくれます。おまけに話術にも長けていて情報収集の役にも立つという有能さも合わせもっており至れり尽くせり。完全にネイサンのとばっちりを受けているのに、文句ひとつ言わない献身さはもはや聖人の域に達していたと思います。

 

このように二人を優遇しているからか、本作は結構都合よく物語が展開します。
ちょうどいい時に敵が攻撃してきてそれが助けになっていたり、超重要なアイテムを知らず知らずの内に手に入れていたり、まさに映画的な偶然が何度も起きていました。
アクション映画にはありがちな展開ですし、そこまで気にはならなかったですが、上に書いた話も含め「優遇されてるなぁ」という思いがありましたね。

 

しかし、アクションにおいては優遇もへったくれもありませんでした。
最初に書いたようにそもそもアクションが少なめですしね。
ネイサンがやったことといったら、列車内での殴り合いくらいでしょうか。
カーチェイスや銃撃戦、ラスボスへのトドメまで他人に持っていかれるというのは、いくら未熟な学生が主人公とはいえ活躍の幅が狭すぎます。
一応、常に話の中心(命を狙われている)のはネイサンであるため、存在感はありましたがそれでも物足りなさを感じましたね。

 

そんな味気ない本作ではありますが、興味を惹かれたのがネイサンの父親マーティンを演じた俳優です。
作中、電話での会話と若干の姿は映されているのですが、ネイサンと顔合わせをすることはなく、俳優が誰かも分からないまま作品は終了してしまいます。
おまけに、エンドロールもノンクレジット。わざわざ調べないと分からないレベルでした。
で、調べたところ、正体はダーモット・マローニーという俳優らしいです。
スリープレス・ナイト』(2017)や『ダーティ・グランパ』(2016)、『インシディアス 序章』(2016)など、出演作はあるものの、基本的には脇役が多め。
本作でのちょっとしか映らない状況で判別できる人が一体どれだけいるのか……
どうせ出演させるならもう少しガッツリ映しても良かった気がしますね。

 

サスペンス7割、アクション3割くらいで、冒頭にも書いたようにまあまあ楽しめた本作。
テイラー・ロートナーやリリー・コリンズといった、若い俳優の活躍を楽しめるという点では面白い作品だと言えるでしょう。