【レビュー】ゼット 見えない友達(ネタバレあり)
子供がイマジナリーフレンドの存在を作り出すことは珍しくありません。
世間一般では「ほうっておけばその内消える」という見解がされています。
しかし、その存在がもし本当にいたとしたら……?
今回レビューする『ゼット 見えない友達』はそんな作品です。
ストーリー
8歳の息子ジョシュを持つ母親ベス(エリザベス)は、彼がイマジナリーフレンドと接していることを知る。
夫のケヴィンはその内消えると言うものの、その症状はしだいに酷くなっていった。
ベスがイマジナリーフレンドの名前を聞くと、ジョシュは"Z"(ジィー)だと答える。
感想
イマジナリーフレンドだと思っていたら実は幽霊だった!というシンプルなホラー映画。
しかし、ホラー要素はラスト30分しかない上に、"Z"の姿もほとんど映らないというホラー映画ファンからしたら頭を抱えたくなるような内容でした。
とはいえ、ホラー要素を抜きにすればなかなか楽しめました。
突然おかしくなり始めたジョシュを前に困惑するベス。
それがだんだんとエスカレートしていくテンポのよさは見ていて苦になりません。
上映時間が83分ということで次々問題が発生するわけです。
で、そうした問題が起きるのに臨場感を与えていたのがジョシュを演じたジェット・カイルです。
"Z"が見える子供という非常に難しい役をしっかりとこなしていたのが印象的。
表情ひとつで、不気味な雰囲気を漂わせる演技力は今後、大成することを思わせる確かな演技力がありました。
後、いきなりゲロを吐くシーンがあったりと、体も張ってます。
そんな子役を相手取るだけにベス役のキーガン・コナー・トレイシーも負けていられません。
おかしくなりつつあるジョシュの姿に心労を募らせたり、育児に不干渉な夫ケヴィンと衝突したりと、不安定になりつつある家庭環境に振り回される姿が印象的。
終盤にはジョシュと入れ替り(というか彼女がもともとのターゲット)、"Z"に追われるように。
ジョシュに「友達の"Z"を取るな」とか怒られる理不尽な仕打ちに耐えながらも彼を助けるために犠牲になる母性を見せていました。
"Z"の存在に怯え、疲弊し、絶望する姿は真に迫る演技でした。
で、他のホラーと異なり本作のオリジナリティがあったのが"Z"の設定です。
幼少時代ベスに惚れて、それから数十年を経て戻ってくるという、純愛を貫くなんとも斬新な幽霊。
そのために彼女の夫であったケヴィンを殺したり、ジョシュを人質に取ったりと独占欲が強く暴力的なのはむしろストーカー気質と言えるでしょう。
ベスの部屋にそっとウエディングドレスをおいて結婚式を始めたりするのは、ある意味怖いやつでした。
ほとんど姿を見せない"Z"をまるでそこにいるかのように俳優に演じさせていた本作。
ホラー映画を低燃費で抑える努力が垣間見える、ある意味斬新な作品でした。(本作の予算を調べてみたのですが、情報がなかったため断念。低予算であることは確実でしょう)