【コラム】劇場で見たい!2021年2月公開映画!
2月に入り、はや1週間。
新作も少しずつ公開される中、個人的に見たい映画をまとめてみました。
今回は、その中でも特に見たい作品10作をランキング形式で紹介していきます。
まずは、個人的に見たい作品の一覧から紹介。
上映日 |
上映作品 | 制作国 | ジャンル |
---|---|---|---|
2021/02/05(金) | 樹海村 | 日本 | ホラー |
イルミナティ 世界を操る闇の秘密結社 | アメリカ | ドキュメンタリー | |
ダニエル | アメリカ | スリラー | |
ディエゴ・マラドーナ 二つの顔 | イギリス | ドキュメンタリー | |
インビジブル・スパイ | 香港 中国 |
クライム | |
食われる家族 | 韓国 | サスペンス | |
シンクロニック | アメリカ | SF | |
ダーリン | アメリカ | ホラー | |
ブラック・クローラー | オーストラリア アメリカ |
パニック |
|
2021/02/11(木) | ファーストラヴ | 日本 | サスペンス |
すばらしき世界 | 日本 | ドラマ | |
春江水暖~しゅんこうすいだん | 中国 | ドラマ | |
マシュー・ボーン IN CINEMA 赤い靴 | イギリス | 舞台 | |
マーメイド・イン・パリ | フランス | ロマンス | |
2021/02/12(金) | コスモボール COSMOBALL | ロシア | SF |
デンマークの息子 | デンマーク | サスペンス | |
ノンストップ | 韓国 | アクション | |
バッド・ヘアー | アメリカ | スリラー | |
秘密への招待状 | アメリカ | ドラマ | |
ファブリック | イギリス | ホラー | |
私は確信する |
フランス ベルギー |
サスペンス | |
2021/02/13(土) | 地獄の警備員 | 日本 | ホラー |
2021/02/19(金) | 愛と闇の物語 |
アメリカ |
伝記 |
アンコントロール | デンマーク | クライム | |
ある人質 生還までの398日 | サスペンス | ||
ベイビーティース | オーストラリア | ロマンス | |
世界で一番しあわせな食堂 |
イギリス 中国 |
ドラマ | |
潔白 | 韓国 | サスペンス | |
スカイ・シャーク | ドイツ | SF | |
モンテッソーリ 子どもの家 | フランス | ドキュメンタリー | |
藁にもすがる獣たち | 韓国 | サスペンス | |
2021/02/20(土) | 地球で最も安全な場所を探して | スイス | ドキュメンタリー |
2021/02/26(金) | カポネ | アメリカ カナダ |
クライム |
ガンズ・アキンボ | イギリス ドイツ ニュージーランド |
アクション | |
スカイライン 逆襲 | イギリス スペイン リトアニア |
SF | |
ステージ・マザー | カナダ | 音楽 | |
ナタ転生 | 中国 | アニメーション | |
ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日 | フランス | ドラマ | |
MISS ミス・フランスになりたい! | フランス | ドラマ | |
リーサル・ストーム | アメリカ | アクション | |
レンブラントは誰の手に | オランダ | ドキュメンタリー | |
2021/02/27(土) | DAU. ナターシャ | ドイツ ウクライナ イギリス ロシア |
ドラマ |
夏時間 | 韓国 | ドラマ |
ということで、あらすじをパッと見て興味を惹かれた作品をリスト化してみました。
では、続いてここから期待作TOP10を紹介していきます。
10位:ある人質 生還までの398日
2013年に実際にあった救出劇を映画化した作品。 シリアの非戦闘地域を訪れた写真家ダニエルがIS(イスラム国)に誘拐され、拷問や飢え、苦しみを受ける日々をリアルに描いています。
見所:ISの恐ろしさを忠実に再現した実話
内容だけで言えばかなり興味を惹かれ、もっと上位でもいい作品です。
しかし、タイトルが悪い。
予告編を見ただけでも「この人一体どうなってしまうんだ?」とハラハラドキドキしたのに『生還までの398日』
もうこれでガックリですよ。
結果を知ってしまうと、ただ拷問シーンを見るだけの映画になってしまいそうなので、作品としては良さそうなのですが10位です。
9位:藁にもすがる獣たち
日本人作家の曽根圭介による小説を原作に、韓国が映画化した作品。 金を欲した5人の男女が、10億ウォン(約1億円)の入ったカバンを巡り争いを繰り広げる様子を描いています。
見所:バイオレンスさ全開の現金争奪戦
韓国ノワールのバイオレンスさには毎度毎度驚かされるので期待度高めな一作です。
また、争奪戦を繰り広げる5人の男女も個性派揃いとなりそうであるため、内容としてはシンプルに面白そう。
ただ、ドラマ性はそこまでないのかな?と思えるため「韓国ノワールやっぱ刺激的だ」という感想で終わりそうな気がします。
8位:ノンストップ
韓国の歌手兼俳優のオム・ジョンファがアクションに挑戦した作品。 ハワイ旅行が当選したミヨンが、夫と娘と共に乗った旅客機でテロリストに遭遇。ミヨンの秘められた力が覚醒しテロリストを打ち倒していく様子を描きます。
見所:飛行機内で繰り広げられるアクションに次ぐアクション
飛行機内という限られた空間でテロリストを打倒していくという、80、90年代のハリウッド映画的な内容に惹かれました。
予告編を見る限り、アクションの精度も高そうで、コミカルさもあるようなので個人的には好きなジャンルです。
ドラマ要素はそこまで濃くはないのかもしれませんね。
7位:ディエゴ・マラドーナ 二つの顔
世界的な人気を誇るサッカー選手マラドーナの半生を追ったドキュメンタリー。 サッカー選手としての栄光の姿だけでなく、マスコミと騒動を起こす姿など、プライベートな所まで踏み込んでいます。
見所:マラドーナ本人が監修した彼自身の物語
サッカーにわかの私でも存在を知っているマラドーナ。
彼のサッカー技術についてだけのドキュメンタリーならそこまで興味はないのですが、プライベートなどにもフォーカスしているらしくそこは少し惹かれます。
また、本人監修のもとで作られた作品であるため、クオリティは高いのではないかと思います。
この作品に携わり、2020年11月に亡くなったということもあり、気になる一作です。
6位:スカイライン 逆襲
2011年に公開された『スカイライン 征服』から続くシリーズ3作目にして完結編。 今作では、宇宙人「ハーベスター(=収穫者)」の影響により、特殊なDNAを持つようになった女性ローズが、人類の逆襲を果たすまでを描いています。
見所:『スカイライン』シリーズ完結編
毎作「まあこんなものか」と思いながらもいざ新作が来るとなると楽しみになってしまうシリーズです。
今作は完結編らしく宇宙人をぶっ潰すために宇宙にも進出するのだとか(予告編からの知識)
CGとか力が入っていますし、エンタメ性が高く、絶賛するほどではないにしても安定した面白さはありそうです。
5位:ガンズ・アキンボ
ダニエル・ラドクリフ主演によるアクション映画。 本物の殺し合いを生配信する闇サイトで、荒らし行為を行っていた男が主催者の逆鱗に触れてしまいデス・ゲームに参加させられることとなります。
見所:ダニエル・ラドクリフの二丁拳銃アクション
なにかとキワモノ作品に出演することの多いラドクリフ。
今回は二丁拳銃オタク役でデス・ゲームに参加すると聞いて「こりゃもう見るしかない!」と思いました。
見たい度としては高めですが、果たして面白いのかは不明なため5位という無難な順位です。
4位:レンブラントは誰の手に
オランダの画家レンブラントの絵を巡り、落札した画商ヤン・シックスの奔走を描いたドキュメンタリーです。 偽物の多いレンブラントの絵の真偽に加え、フランスのルーブル美術館とオランダのアムステルダム国立美術館の所有権争いを描いています。
見所:絵画を巡るフィクションのような壮大な争い
オンライン上映会の広告が映画サイトで紹介されていたことから存在を知った作品。
絵が本物か偽物かという審議をレンブラントという画家にフォーカスしながら紹介するという面白さと、国同士の絵画の取り合いという社会情勢にも触れている内容は、個人的に興味があるため期待度は高めですね。
3位:マーメイド・イン・パリ
フランスの人気男優ニコラ・デュボシェルと若手女優マリリン・リラが共演した作品。 男を虜にし命を奪ってきた人魚ルラと、失恋により恋をしないことを誓った男ガスパールが運命の恋に導かれていくまでを描いています。
見所:美しくロマンス溢れる水中シーン
予告編を見てまず惹かれたのが光の使い方。
色とりどりで美しく、ロマンスをより高める表現力は期待を高めてくれました。
また、水中でのシーンはまるで『シェイプ・オブ・ウォーター』を彷彿とさせるロマンチックさ。
パリのオシャレな雰囲気に負けない演出に期待の掛かる一作です。
2位:カポネ
トム・ハーディが主演となり、アル・カポネを演じた伝記映画。 1940年代、服役生活を終え、隠居生活を送る認知症となったアル・カポネと、それを仮病と判断し、執拗に彼を追うFBI捜査官の姿を描いています。
それだけでも内容は度外視で期待できます。
しかも認知症か否か分からない演技の試される役どころということもあり、ますます期待は高まるばかり。
ファンにとっては注目せずにいられない作品です。
1位:私は確信する
フランスで実際に起きた“ヴィギエ事件”の裁判について映画化した作品。 3人の子を持つ女性が失踪。容疑者とされた夫ジャックが容疑者とれる中、シングルマザーのノラは、弁護士デュポン=モレッティを引き連れ戦いに挑みます。
見所:「ヴィギエ事件」の真相へと迫る白熱の裁判シーン
裁判映画ということもあり、一番の見所はやはり裁判シーンです。
しかし、注目なのが本作は実際にあった事件を取り扱っていること。
"ヒッチコック狂"による完全犯罪と言われた事件の再現にも期待したいところです。
まとめ
ここまで2月公開の映画の中でも期待度が高い映画10本を紹介しました。
驚くべきは洋画のビッグタイトルは一本もないということ。
時勢が時勢だから仕方ないとは思いますが寂しいですね。
とはいえ、その分ミニシアター系を発掘する楽しみもあり、新たな出会いをするチャンスとも言えます。
地方が故に見れない作品もありますが、いつの日かディスクがリリースされれば見れる機会もありますし、今後もチェックを続けていきたいですね。
【ネタバレあり・レビュー】星空の用心棒 |
ストーリー
無実の罪で30年の刑期を言い渡されたテッド・バーネットは復讐のために脱獄を果たす。その事を知った保安官ダグラスは、警戒を強める。
それを退けたバーネットはダグラスの他にコッブが復讐の対象であることを知り追い始める。
感想
ジュリアーノ・ジェンマが主演のこの作品。内容は良かったですが、特にジェンマ演じるバーネットは用心棒でもなければ星空の下で戦うわけでもない、間違いだらけのタイトルでした。
まあ、西部劇界隈では続きでもなのに「続」をつけたり、夜に戦闘が開始されるのに「真昼の」とつけていたりと、「人気作を連想させれば勝ち」みたいな風潮がありますから問題ないのでしょう。
ちなみに、原題は『I lunghi giorni della vendetta』
意味としては「復讐の長い日々」となります。
本編中は、2,3日しか経っておらずパッと見「長い日々?」と思いましたが、設定を考えると、無実の罪で3年間投獄されていたのですから十分に長い日々だったと言えるのでしょう。
さて、そんな本作の見所は、やはりジュリアーノ・ジェンマの活躍でしょう。
爽やかで大胆不敵。アクションを軽快にこなしてしまう姿は、いつの時代でもカッコいい男として映ります。
しかし、そのジェンマ演じるバーネットは囚人であったこともあり、初登場時には髭も髪も延び放題のボロボロな状態でした。
その身なりを整えるのに、あえて仇敵に髪を切らせ、髭を剃らせるのですから度胸が据わっています。
冒頭のこの大胆さだけでもバーネットというキャラクターに惹かれますし、その直後に爽やかなイケメンが出てくればもう目が離せません。
改めてジェンマの魅力の吸着力のすごさを思い知らされました。
そんなバーネットの魅力は至るところで見ることが出来ます。
中でも印象的なのが、仕掛け糸で銃を撃ったり、馬の体を死角にして敵の懐へ潜り込むといったユーモラスな戦い方。
単純なアクションだけでなくこうした頭を使った戦いも見せてくれたため「次は一体どうやって窮地を切り抜けるんだ?」と、ワクワクさせられました。
一方で、敵も一筋縄ではいきません。
そもそも保安官ダグラス、ポルフィリオ将軍、黒幕コッブと、三人もいますからね。
さらに三人とも部下を多く抱えており、悪知恵も働くため、バーネットの策が通用しないこともありました。
最後の戦いが終わる頃には撃たれまくって重傷でしたし、ハラハラドキドキさせられる展開が多かったですね。
とはいえ、仲間たちのサポートにより窮地を切り抜けるシーンなんかもあって、王道的なマカロニ・ウエスタンの面白さがあったと思います。
ジュリアーノ・ジェンマが魅力的であった本作。
それは彼自身の魅力だけでなく、作品のユーモアがピタリとはまっていたからだと言えるでしょう。
ますますジュリアーノ・ジェンマを好きになれる作品でした。
【ネタバレあり・レビュー】三人の名付親 |
ストーリー
西部のならず者ボブ、ピート、キッドは、アリゾナ州ウェウカムの町で銀行強盗をはたらく。しかし、スイート率いる保安官たちにより、キッドは負傷。三人が持っていた水袋も破壊されてしまう。
砂漠へと逃れた三人は、僅かな水しかないことから水場を探して彷徨っていた。
そこで三人が出会ったのは、妊婦が乗る一台の馬車であった。
感想
タイトルそのままに、西部のならず者であった三人が名付け親になるという異色の西部劇でした。本作の原題は『3 Godfathers』
「ゴッドファーザー」なんて聞くと、マフィアのボスなんかを想像しますけど、カトリックでの洗礼時の代父(名付け親)を指す意味もあるらしく、なるほどタイトルに違わない内容でした。
そんなボブ、ピート、キッドの三人が名付け親となるのが作品のテーマなわけなのですが、意外とここに辿り付くまでが長いです。
おそらく107分の本編時間の内、50分くらいにならないと本筋には入りません。(赤ん坊が生まれる→三人が名付け親になるまでの流れを入れたらおそらく1時間超えてます)
では、そこまで何をしているのかというと三人による逃走劇です。
銀行強盗をしたことで、スイート保安官らに追われる身となった三人の過酷な行程を見せていました。
そこで印象的なのが砂嵐のシーン。
スペイン人のピート曰く、"サンタナ"と呼ばれるその砂嵐(作中ではサンタナ将軍の騎兵隊が撒き散らす砂ぼこりと説明)は、端から見ると幻想的で美しさすら感じます。
しかし、三人にとっては体力は奪われるし、前に進みずらいし、馬は逃げるしでいい事なし。自然の美しさを見せる一方で、恐ろしさを見せていました。
そうした美しさと絶望の入り混じった景色は他のシーンでも見られました。
例えば、果てしなく広がる塩湖であったり、遠くに見える山脈であったり、自然が作り出した洞窟であったりなど、目を見張るような自然の雄大さは、同時に無情な現実を突きつけていました。
そんな地獄のような環境を歩く三人ですが、そうなってしまったのは自業自得。むしろ、私利私欲のために町の人々を恐怖に陥れたことを考えると、苦痛を受けるのは当然とさえ言えるでしょう。
しかし、彼らの姿を見ていると応援したくなってくるのですから不思議なものです。
それはおそらく三人が見せる掛け合いなどから個性が見えてくるからなのだと思います。
で、その掛け合いがより面白くなるのが赤ん坊が登場してからでした。
赤ん坊ことロバート・ウィリアム・ペドロ・ハイタワー(三人の名前から取った名前)を我先にと世話を焼こうとしたり、ボブが赤ん坊を「ロバート」(自分の名前)でしか呼ばないと、他の二人がフルネームで言い直したりなど、子煩悩な父親の姿を面白おかしく見せていました。
なにより心に刺さったのが、三人が赤ん坊を守るため、少しでもまともになろうとしていたこと。
自分の荷物はもちろん、銃も捨てて赤ん坊の荷物を持つ彼らの姿は、父性を感じさせました。
それまで生き残ることしか考えていなかった三人が赤ん坊の世話に付きっきりとなり、自分たちの置かれた状況を忘れて没頭するのはコミカルではありましたが、心暖まるものでもありました。
しかし、それで終わらないのが本作の非情な所でした。
最終的に、ピートとキッドは命を落としてしまうんですね。
けれど、キッドからピートへ、ピートからボブへと赤ん坊がつながれていき、ボブが二人の思いを受け継いでいくシーンは感動的でした。
幻覚ではあるものの、ボブが二人の声に励まされ立ち上がる姿なんて今の時代でも通用する熱いシーン。
面白い作品としての王道を築き上げていたと言えます。
ラストシーンでは、ボブがちゃんと赤ん坊を三人の名前で呼ぶようにもなっており、前振りをきっちりと生かす丁寧な作品作りを感じさせました。
三人のならず者が赤ん坊と出会うという異色は設定の西部劇であった本作。
しかし、そこから生まれるのは子を持つことで男たちが地に足をつけるようになる人間味溢れるストーリーでした。
その人間の本質を突いたような内容は、非常に親近感を覚えるもので、今の時代にも通用するものであったと思います。
【ネタバレあり・レビュー】スキンウォーカー | カナダ発の異色ホラー映画!
ストーリー
人の命と記憶を乗っ取る力を持つある"生き物" 彼は人間社会に紛れては他人の体を乗っ取り、長い年月を生き抜いてきていた。 しかし、近頃は新たな体に乗り換えてもその体は数日で腐るようになっていた。 そんなある日、彼はバーで出会った一人の女性に恋をする。 彼は、腐る体を入れ替えつつ、違う体で何度も彼女に声をかけ続ける。
感想
正直な所、あまり期待をせずに見た作品です。 で、全体的な感想としてはその低いハードルとどっこいどっこい。それなりな面白さでした。 その中で一番興味を惹いたのが、一番の売りでもあるスキンウォーカーの設定。 そもそも「スキンウォーカー」は、作中でも若干触れていましたが、ネイティブアメリカンの伝承に登場する動物もどきことらしいです。 その動物もどきが持っている能力が、主人公の持っているものと同じなのだとか。 その具体的な能力は、他人の体に触れることで他人の体を奪い取ることができるというもの。 しかし、それと同時に乗っ取った相手を殺してしまうんですね。 本作オリジナルの設定であったのが、そうした"乗っ取り"をやり過ぎてしまったことにより、主人公の入った体はすぐに腐り出してしまうようになっていた事です。 そのため、次から次に獲物を見つけては証拠が残らないように乗っ取りをするという展開はなかなか面白かったと思います。(この性質上、主演の俳優がいないというのがなんとも低予算作品らしいです)
さて、そんなオカルトSFマニアなら生唾ものの設定なわけですが、メインストーリーはなんとロマンス。 バーで出会ったある女性に恋をした主人公が、上記の理由から体をとっかえひっかえして逢うしかなく、毎回初対面になってしまうというのをじっくりと描いていました。 ぶっちゃけロマンス要素はそこまで面白味はありませんでしたね。お互いのことを話しているだけでロマンチックさもあまり感じられませんでしたし。 ただ、最終的に能力のせいでその恋をした女性の体を乗っ取ってしまうという展開は、皮肉で面白かったと思います。 あそこに辿り着くまでの前置きと考えれば途中のロマンス要素も無駄ではなかったという事なのでしょう。
衝撃的……というか謎だったのがラストシーン。 体が腐り死ぬのかと思いきや、脱皮して新たな体で生まれ変わってしまいます。 「一体どういうこっちゃ?」と思いましたが、それがどうやら作品のオチらしいです。 主人公はそもそも人間であったと自称していましたが、どうやらそれすらも誰かの体を乗っ取って得た記憶なよう。 たしかに衝撃的ではありますが、それでスッキリするかといったら……微妙。風呂敷広げて終わったようなもんですからね。
とはいえ、84分と短い時間であること、冒頭から最後まで変身能力の設定を惜しみなく使っていることなどもあって個人的には楽しむことができました。(ほどよいグロもありましたし)
謳い文句の「異色ホラー」が気になったことから今回鑑賞をした本作。 能力を持った"生き物"の独白であったり、一筋縄ではいかないラストであったりと、その独特な雰囲気はまさに異色ホラーでした。 制作国はカナダと、ホラーに馴染みのないイメージのある国ですが、面白い作品を作るなと思いました。
【ネタバレあり・レビュー】燃えよデブゴン/TOKYO MISSION |
ストーリー
香港警察の刑事チュウ・フクロンは、優秀ながらも犯人逮捕時に物を壊すなどの多大な被害を与えることから、証拠品保管室へと左遷されてしまう。 さらに、仕事一筋であったことがたたり、恋人であるホーイにも別れを告げられてしまう。 それから6ヶ月後、フクロンはデスクワークと暴飲暴食により体重120kgまで太っていた。 そんな折、元同僚であった上司ファンから、日本で轢き逃げ事件を起こした容疑者を日本へ移送する任務を押し付けられる。 しかし、その容疑者はヤクザのある取引を目撃しており、日本で命を狙われていた。 日本に着いて間もなく、容疑者は姿をくらませてしまう。 フクロンは、容疑者を追う内に、その事件へと巻き込まれていく。
感想
久しくぶりに劇場に足を運んで見た作品。 その理由はひとえにドニー・イェンが主演しているから! しかも、サモ・ハン・キンポーの代表作『燃えよデブゴン』のタイトルまでついているじゃないか!(中国語の題名なんて『肥龍過江』で全く同じですし) そんなわけで、期待値高めで見たわけですが、ドニーファンとしては満足、そこを引いたら普通くらいの面白さでした。
一番の魅力、ドニーのアクションは本当に見ていて楽しかったです。 デブになっても飛んで走って戦える軽やかな身のこなし。それでいて、攻撃方法は体重を使ったものが多く、没個性とならない面白さはカンフーアクションを存分に堪能できました。 シチュエーションも、走行中のトラックの中、新宿もどきの繁華街、市場、東京タワーなどバリエーション豊富。 それらの地形を生かし、縦横の平面的な戦いだけでなく、上下にまで展開した立体的な戦いを見せていたのも素晴らしかったと言えます。 敵に関しても、若干おかしいヤクザをダンサー兼俳優の丞威が好演。クレイジーな濃いキャラで、ラストの戦いにふさわしい敵となっていました。(監督・谷垣健治は日本人であることからヤクザのキャラもわざと濃い目のキャラクターにしたのだと考えられます) ここでドニーが見せるヌンチャクアクションがまた凄かった。 文字通り目にも止まらぬ速さで振り回すその姿はブルース・リーを彷彿とさせる迫力がありました。 あんなの見せられたら誰だってテンションが上がりますよ。 アップテンポかつ、スピード感のある音楽の効果も重なり、ラストの戦いでは盛り上がりっぱなしでした。
質もボリュームも十分なアクションシーンは、ドニー・イェンの凄さを改めて思い知らされました。
そんなアクションが素晴らしい反面、首を捻ることになったのがストーリー。 コミカルなのはまあいいのですが、その面白さがまったく分からない。 おならであったりハゲ隠しのカツライジりであったり、小学生なら喜びそうなネタを何度もぶっこんでくるセンスは正直、見ていて恥ずかしさすら感じてしまいました。 一番思ったのが「竹中直人のキャラ必要?」ということ。 ギャグしかしないキャラな上に小悪党、特に物語の鍵となるわけでもなければアクションシーンがあるわけでもありません。 竹中直人自身は生き生きと演じていて楽しそうでしたが、せっかく連れてきているのに魅力を出し切れていなかったような気がしました。(個人的にはもう少しシリアスな面を見せて欲しかったです)
とはいえ、そうしたコミカルシーンはそこまで長くなかったのが救いでした。 メインストーリーであるヤクザとの戦いは、ご都合主義の多い展開ではあったものの、アクションを楽しむ上で邪魔にならない分かりやすさであったのでちょうど良かったかと思います。 ロマンスシーンはちょっとくどく感じましたが、アクション映画で恋愛描写はお約束。 なによりアクションシーンで恋人を守りながら戦うというエンタメ性を追加していたので、結果的になくてはならない要素だったのだと理解できました。
個人的には変なギャグシーンさえなければ「良作だった!」と声を大にして言えた完成度でした。
ドニー・イェンのアクション見たさで鑑賞した本作。 アクションはもちろん、太ったドニーというこれまでにないキャラクターを見れたこともあり、満足度は高かったです。 ぜひとも、日本を舞台にした映画にまた参加してもらいたいものですね。
【ネタバレあり・レビュー】アルカトラズからの脱出 | クリント・イーストウッドが挑む実際に起きた脱獄劇!
ストーリー
サンフランシスコ湾に位置するアルカトラズ島刑務所。アメリカ国内の問題のある犯罪者が集められたその刑務所に、フランク・モリスが収容される。
彼はそこで冷酷な所長と出会い因縁を持つ。
脱獄を決意したモリスは、刑務所内で出会ったおしゃべりな青年チャーリーと、過去に同じ刑務所に服していたアングリン兄弟の4人を仲間に引き入れ準備を始める。
感想
タイトルの通り、アルカトラズの刑務所から逃げ出すことだけを目的としている本作。「脱獄映画にハズレなし」とはよく聞きますが、まさにその言葉通りの素晴らしい作品でした。
そもそも、脱獄映画は「入念に準備して脱獄を開始するタイプ」と「一発逆転で脱獄するタイプ」(要は準備シーンを客に見せないタイプ)とがあります。
その枠に当てはめるのなら本作は前者。
序盤から終盤にかけて、時間をたっぷりと使い脱出のための下準備を見せていました。
そうした中で面白かったのが、看守の目をかいくぐる攻防でした。
本作は実話がベースとなっており、その残っている事実だけを映像化したならば見る側からしたら感情移入も盛り上がりもないものとなったことでしょう。
そこで生きてくるのが脚色。
モリスたちが脱出のため準備を進めるわけなのですが、いい具合に看守が現れたりします。
「もうバレてしまう!」とハラハラさせた末にセーフという展開は、手に汗握り気づけば作品に熱中している自分がいました。
もしかすると脚色以上にミラクルな出来事も実際にはあったのかもしれませんが、「モリスが屋上までの通路を探す→次のシーンで看守がモリスを起こそうとする→実はもう戻っていました」といった表現は映画だからこそできるもの。
そうした演出が作品をより面白くしていたのは事実でした。
そんな脱出計画が熱い作品ですが、刑務所内の仲間たちとの交流もなかなか面白かったです。
彼らとモリスの関係は、そこまで濃く描かれるわけではないのですが、脱獄計画に影響を与える必要な要素を抑えていました。
例えば、絵描きのドクとネズミを愛するリトマスの場合は、その悲惨な運命からモリスの脱獄への思いをより強めることにつながっているといった感じです。
中でも印象的であったのが、モリスとは喧嘩友達のようになるイングリッシュとの関係。
彼らは白人と黒人であり、互いに相手の人種を尊重しないことから本来なら相容れない存在でした。
しかし、モリスが脱獄を計画していることを知ったイングリッシュは、脱出に必要なアドバイスを送り間接的に脱獄を手助けします。
そこから感じられたのは、受刑者同士の仲間意識でした。
損得など関係なく、脱獄への希望を持った者を手助けする。
それはもしかすると、自らも自由に対する希望を失っていないからなのかもしれません。
なんにせよ、監獄内であれば人種も関係なく助け合うというのは見ていてグッとくる関係でした。
本作を見ていて最も興味深かったのが、モリスを初めとした脱獄者をまるでヒーローのように描いていた事でした。
しかし、もともと彼らは犯罪者。それは冤罪でもなければ情状酌量の余地があるものでもありません。
では、なぜ彼らがヒーローのように思えるのかというと、それは様々な要素が組み合わさった結果だと思います。
まず、主演がクリント・イーストウッドというだけで、勝手にヒーローというイメージが付いていました。
そのイーストウッドが冷酷無慈悲な刑務所長に対立し、確固たる信念の下、脱獄を決意するのですから彼の肩を持ちたくなります。
また、モリスが受刑者仲間を大切にする人情に厚い男としているシーンもあり、彼の方が良い人間に見えるようになっていました。
モリスが逮捕された理由についても作中では触れられておらず、それも彼が犯罪者というイメージを強調させない手段のひとつだったのかもしれません。(ちなみに罪状は強盗の再犯)
ラストシーンでは、生存して逃げ切ったかのような表現もされていましたし、明確にモリスたちに偏向した描き方をしていました。
※実際のところ、3人は溺死という見方の方が強いらしいです。
その根拠として、アルカトラズ収容前は脱獄後に再犯して捕まるという傾向があった3人が全く痕跡を出さないこと、エンジェル島に泳ぎ着くにはアスリートでも条件が揃わないと難しい(水温や潮の流れなど)ことが挙げられています。
とはいえ、死体が上がらない以上はどちらとも言えないのも事実ですが。
アルカトラズからの脱獄を描いていた本作。
イーストウッドを主演に、作品に引き込んでいく数々の手法は見ていて楽しかったです。
「脱獄映画にハズレなし」という俗説を築き上げた金字塔の一角と言えるでしょう。
【ネタバレあり・レビュー】昼下がりの決斗 | サム・ペキンパーが描く誇り高き自尊心を失わない男の姿!
ストーリー
カリフォルニア。元保安官のスティーヴは、銀行から金鉱で取れた金を運搬する仕事を依頼される。
彼はその旅路に偶然再開した旧友ギルと彼が連れていた若者ヘックを同行させることにした。
その道中、家出少女のエルサと出会った一行は、共に目的地に向かうことに。
しかし、彼女を巡りスティーヴたちは荒くれ者たちと対立することとなる。
感想
サム・ペキンパー監督作ということもあって、結構期待値は大きかった本作。結論としては、地味な良作といった感じでした。
そもそも、本作は哀愁や教訓を感じ取る映画であって、娯楽作のような銃をバンバンと撃つタイプの西部劇ではありません。
そのため、見終わってスッキリ爽快な楽しいものではなく、後になってからじんわりとしみ込んでくる、そういう意味での良作であったと思います。
では、どこにその哀愁や教訓を感じられたのかという話です。
まず「哀愁」の方から。
本作は、年配のスティーヴと相棒ギル、若者のヘックの三人が主な登場人物となっています。
そのため、随所でスティーブたちが老いたことを表すイベントが加えられていました。
例えば、文字を読むのに老眼鏡がひつようであったり、ヘックより早く疲れを感じていたりです。
では、ヘックに比べてワイルドさがないかと言ったらそうでもありません。
ヘックの女たらしで生意気な態度を諫めるために、言葉だけでなく時には拳で分からせる様子は、それまでの人生経験を積んできたからこそできることのように思えました。
これらのエピソードで、味のある演技を見せてくれたのが、スティーヴを演じたジョエル・マクリーとギルを演じたランドルフ・スコットでした。
彼らは、見た目からして年を取っているのは分かるのですが、一方でカッコよさも併せ持っていました。
ヘックに対して嫌味を言ったり、大人げない対応を見せてもどこか親近感を持つことができるのは、コミカルな作風にマッチした彼らの演技があったからこそ。
そんな彼らの別れとなるラストシーンは、切なくも儚いです。
ジョエル・マクリーとランドルフ・スコットの演技があったからこそ、ラストシーンに感じられる哀愁はより強いものに感じられましたね。
次は「教訓」について。
本作、印象的なシーンのひとつに、スティーヴが「自尊心」を大切にするようになったエピソードを語るというものがあります。
この「自尊心」が本作のテーマとも言える重要な要素で、そこに関連してくるのがギルの裏切りでした。
ギルはスティーヴが金を運ぶ仕事の話を聞きつけ、それを横取りしようと目論むわけです。
しかし、スティーヴとは旧知の仲であることからも、分け前を増やすように要求しますが、それは叶いません。
で、結局銃を使った裏切り行為に走るわけです。(返り討ちにあいますが)
この一連のシーンで描かれるのが、ギルの葛藤でした。
「かつての友人を裏切り、金を得るという行為が果たして誇るべきことなのか」という葛藤は、作品の随所で描かれていました。
果てには、共謀者であったペックにも止めるよう説得される始末。
それでも強硬してしまったのは、彼のそれまでの人生が誇りよりお金を優先してきたことの表れだったのかもしれません。
「自尊心」の大切さ、それがひとつの教訓として本作では描かれていたわけです。
ただ、そこで終わってしまうとギルがあまりにも報われない男になってしまいます。
彼が最後に「自尊心」を取り戻すから物語としての面白さがありました。
ひょんなことから命を狙われることとなったスティーヴ一行。
そのピンチにギルが現れる展開はなんとも熱いです。
そこで2vs3の決斗を繰り広げ、敵を倒したものの、スティーヴも銃弾を喰らい倒れることに。(この複数人による決斗もなかなか新鮮で見ごたえがありました)
その彼の代わりに、ギルは金を運ぶ仕事を請け負います。
ここから分かるのはギルはスティーヴから「自尊心」を受け継いだということ。
年を取ってからでも人は変われるということを示しているかのようなラストシーンにはグッと来るものがありました。
余談ではありますが、本作は中盤くらいになぜかエルサの視点に変わり、彼女が荒くれ者と結婚するまでを異様に長く描いていました。
スティーヴたちは完全に空気な状態ですし、なぜあそこでエルサ視点に切り替えたのか謎。
唯一、考えられるとすれば若者特有の先を考えない勢い任せの行動がもたらす結果を見せたかったのではないかということです。
でも、あそこまでじっくり描かなくても良かった気もしますが……
なんだかちょっと中弛み感がありました。
老いた元保安官とその友人の哀愁漂う関係を若者たちを絡めて描いていた本作。
銃撃戦も後半にあるにはありますが、それよりもスティーヴやギルの年の功を感じさせる活躍の方が印象に残りました。
ジョエル・マクリーは次の主演作で、ランドルフ・スコットは本作で俳優業から退いています。
そうして見ると、彼らの演技ひとつひとつに魂を感じられるようでした。