【レビュー】レプリカズ
「キアヌ・リーヴスといえばSF」
そんなイメージが定着したのはおそらく『マトリックス』シリーズが原因でしょう。
近未来の世界を掌握し、戦うキアヌほどカッコいいキャラクターはなかなかいるものではありません。
そんなキアヌが一転、近未来の技術に右往左往するのが今回レビューする『レプリカズ』です。
ストーリーは、ロボットへ死人の意識を移す技術を模索しているウィリアムが、交通事故によって妻子を亡くし、禁断のクローン製作へと着手するという内容です。
この説明でも分かるように、キアヌはいち技術者であり、『マトリックス』のようにアクロバティックな動きはしませんし、『ジョン・ウィック』のように銃をぶっぱなしたりもしません。
あくまで技術者。黙々とクローン作りに励み、完成したらしたで周りにばれないかソワソワしてしまう普通の人間でした。
そんなので何が面白いのかというと、倫理観を問う内容です。
家族を甦らせる技術を持っているとして、それを使うかどうかを問いかける内容は、きっと誰しもが同じ目線で考えてしまうはず。
アクセントとなるのが2つの障害です。
1つ目は、クローン製作のポッドが足らず、家族を1人犠牲にしなくてはならないこと。
2つ目は、その犠牲にした家族の記憶を他の家族から消さなくてはならないこと。(家族が消えていたら交通事故を思い出してしまうため)
これらの障害があることによって、ウィリアムの選択が間違っていることを痛感せずにはいられませんでした。
しかし、それでも後戻りはできずに突き進む彼の姿は、人間の業の深さを感じさせました。
そんなキアヌ・リーヴスの様々な姿が見れるのもまた、本作の面白い所でした。
家族を亡くして落ち込むキアヌ、自身の行いが正しいか葛藤するキアヌ、秘密がバレそうになりあたふたするキアヌ、etc……
アクション映画でのカッコいいだけのキアヌではなく、弱い部分もたくさん持っている人間らしいキアヌを見ることが出来ました。
もちろんカッコいいシーンもあって、システムを弄くる姿なんかは、やっていることは意味不明ですがカッコよかったです。
『マイノリティ・リポート』感あるユーザインターフェイスはまさにロマン。
むしろ、あれをやらせたいがためにキアヌを呼んだのではないかと思ってしまうほどでした。
名作SFと比べると、かなり地味に映ってしまう本作。
とはいえ、主演のキアヌ・リーヴスの魅力を生かし、普段とは異なる役柄を見せてくれたのはそれだけでも評価できると思います。