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【レビュー】パペット大捜査線 追憶の紫影

パペットといえば、「セサミストリート」を初め、子供に人気な存在です。
それだけに長年愛され、認知度もかなりのものだと言えます。
そんなパペットが人間と共存している世界観を舞台にした作品が、今回レビューする『パペット大捜査線 追憶の紫影』です。

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ストーリー

人間とパペットが共存するロサンゼルス。
元ロサンゼルス市警で警察官として働き、現在は私立探偵であるパペットのフィルは、ストーカー行為に悩まされるサンドラの依頼を受ける。
フィルが捜査の一貫でアダルトショップを訪れるが、そこでパペットたちが惨殺される現場に遭遇した。
その後もパペット殺しが続いたことから、市警はフィルと元相棒であったエドワーズに協力して捜査に当たることを命ずる。

感想

2019年度のゴールデン・ラズベリー賞にて、最低主演女優賞(メリッサ・マッカーシー)を獲得していた本作。
そんな話題作であっただけに、劇場公開でされたら見ようと思っていましたが、地方での上映がなかったために見るのを断念した作品です。

そんな中、ようやく見る機会に恵まれたわけなのですが、率直に言って平均点くらいの普通の内容でした。
たしかにパペットと人間が入り混じる世界観やそれを生かした展開は斬新で目を惹くのですが、それがストーリーに影響を与えるかといったらそうでもなかったんですよね。
パペット差別を取り入れたり、残酷描写をソフトに見せたり、可愛らしいパペットたちに下ネタをやらせたりと、それ単体で見れば面白い設定なのですが、ではそれが本筋である「連続パペット殺し」に関連しているのかといったらそうではありません。(残酷描写は恨みからという意味があるっちゃありますが)
むしろ、差別描写については事件に関連がないだけでなく、単体の問題すら解決していないのですからスッキリとしません。これならいっそ取り入れなかった方がマシだったのではないかとさえ思えました。

で、パペット要素を取り入れたことによってネックとなっていたのがアクション面。
エンドクレジットでもその頑張りが見られましたが、パペットは人間が操っているものでした。
そのため、激しい動き(特に移動を伴う動き)は、ほぼ不可能に近い状態なわけです。
そうなると、チェイスや格闘、銃撃戦といったサスペンス・ミステリーのアクセントとなるちょっとした要素が取り入れられなくなります。
その分、コメディ要素を増やしたのかもしれませんが、やはり盛り上がりとなる山がないため、ダラダラとした展開が続く印象がありました。
一応、フィルの相棒であるエドワーズがアクションを見せるシーンはありましたが、やはり物足りなさを感じずにはいられませんでしたね。

と、ここまでイマイチな点を挙げてきましたが、冒頭にも書いたように評価としては悪いわけではありませんでした。
ストーリーはサスペンス・ミステリーの王道で、連続殺人犯を追う中でも次々に事件が襲いかかってくる、いわゆる謎が謎を呼ぶ展開で見ていて楽しめました。
また、個人的に下ネタは大好物なので、パペットを使った斬新なネタは見ていて楽しかったですね。

そして、おそらく本作最大の見所であったのが、エドワーズ役を演じたメリッサ・マッカーシーでしょう。
彼女は、同年にアカデミー賞で主演女優賞にノミネート(『ある女流作家の罪と罰』)されていた程の演技派俳優。
それだけに、シリアスな展開からコミカルな展開まで、クオリティの高い演技を見せてくれているんですよね。
中でも、砂糖を吸引してハイになるシーンはいい意味で低俗さが表現されており、彼女の演技力の高さを感じられました。
時にはパペットと取っ組み合いをしたり、時には友情を芽生えさせたりなど、全編に渡りパペットとつるんでいても違和感のない演技は作品を支えていたと言っても過言ではないでしょう。