【ネタバレあり・レビュー】映画『スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間』に見る、死後の人体のアレコレについて!
今となっては無数に存在するゾンビ映画。
様々なシチュエーション、様々な特徴を持ったゾンビによるそれらの作品は面白さはあるものの、ゾンビへの恐怖というのはどんどん薄くなってきているように思います。
今回紹介する『スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間』は、そんなゾンビに対する恐怖を少し変わった視点から描いた作品です。
ストーリー
レズビアンであるサマンサはある夜、友人のパーティーで謎の男に薬を盛られレイプされる。
翌日、パーティーでの出来事を思い出せないサマンサはいつも通りの生活を送る。
しかし、あり得ない量の出血など体の不調が次々に起こり始めた。
感想
本当にタイトル通り、主人公サマンサがゾンビになるまでの3日間を追っているだけの作品。
劇的展開もなければ、そこまで派手なシーンもない、ただただサマンサが体調を崩していってゾンビになっていくだけです。
けれど、それが斬新でした。
ゾンビ映画は数多く存在していますが、本作のように感染から発症だけを描く作品なんてなかなかないかと思います。
また、サマンサ自身はもちろん、国もゾンビウイルスの存在なんて知らないというのが面白かったです。
これによりサマンサの体に並々ならぬ事態が起こっているのに、その病状が誰一人分からないという展開を見せていました。
これが本作の恐ろしさを引き出していたと思います。
ちょっとした二日酔いかと思いきや、大量に出血をしたり、歯が抜けたり、髪が抜けたりと、次々とエスカレート。
その止められない、手の下しようのない絶望は、タイトルから彼女の結末が予想できることからもただただ悲惨でしかありませんでした。
しかもそのきっかけとなるのが、パーティーで変な男に出会ってしまったというだけ。
その不条理さは、見ているこちら側にも「ゾンビウイルスでなくとも変な病気を移されるかも……」という恐怖を易々と連想させていました。
少し話は逸れますが、本作の原題は『Contracted』(契約)
サマンサが、(意思とは関係なく)契約をしてしまい、そこから逃れられなくなる恐怖を匂わせるタイトルでした。
なかなかに皮肉の効いたタイトルだとは思いますが、おそらく日本人としてはそのままカタカナで「コントラクティッド」としてもほとんど興味を示さないでしょう。
「ゾンビ」と入れるだけで私のようなB級映画好きが集うのですから面白いものです。
殺し殺されの勢いでいくゾンビ映画も面白いものですが、ゾンビ映画の当たり前に着眼したこの作品は、いい発想であったと思います。
人の体は中から腐るか外から腐るか
主人公サマンサの体が少しずつゾンビに近づいていく(腐っていく)のを3日かけて描いているこの作品。
見ていると分かりますが、その過程はグロテスクながらも丁寧さを感じさせました。
それを見ていてふと思ったのが、この作品の描写はどのくらい正確なのかということ。
そこで簡単に死の流れと本作での扱いについてを比較してみました。
あくまで検索して調べたにわか仕込みの知識なのでそこまで正確とは言えないかもしれませんがご了承ください。
1 | 20分~30分 | 細胞が破壊され、細胞液が点状の斑点として出現 |
2 | 2時間~3時間 | 破壊された細胞が増え、斑点が融合 |
3 | 2時間~6時間 | 死後硬直が始まる(だいたい3日間続く) |
4 | 6時間~8時間 | 手足の筋肉に死後硬直が表れる |
5 | 8時間~10時間 | 筋肉に力を加えて伸ばすと柔らかくなり、再び硬直を起こす |
6 | 1日~2日 | 腐敗が始まる(消化器系である胃や腸から)腐敗により体内にガスが発生 |
7 | 1日~2日 | 内臓からしみ出した血液がガスにより圧迫され体外に染み出す |
8 | 1日~2日 |
ガスの匂い(腐敗臭)に引き寄せられたハエが体に卵を産み付ける (孵化した蛆が体を喰い始める) |
9 | 20日~50日 | 酪酸発酵現象が起こり始める(死体は乾燥し、腐敗汁を出して肉体は溶け出す |
10 | 1年以上 | 骨になる |
※体温は、1時間あたり0.8度のペースで気温と同じになるまで下がります。
大雑把に死体が骨になるまでの流れをまとめてみました。
で、これを見ると、作中ではだいたい6~8の工程を重点的に描いています。(あとは死斑の描写とか)
印象としては、作品の核である要素でだけにしっかりと体が腐っていく工程を表現していたように思えました。
とはいえ、外見的な変化はガッツリ起こっているのに死臭については誰も触れていなかったり、死後硬直は一切起こっている様子はなかったりと、死体に起こるはずの現象が起きていないのも事実。
まあ、そこはゾンビウイルスがなんかいい感じに作用していると補完してしまえばいいのかもしれませんね。
それでは作中にサマンサの体に起きた不調と、今回挙げた工程とを照らし合わせてみましょう。
●体温の低下⇒血液循環が行われていないため。
●膣からの出血⇒腐敗による内臓の破壊による出血と思われる。
●目が赤くなりやがて白くなる⇒血液の漏洩によるもの(?)白濁は死後24~48時間で起こる現象。
●脱毛⇒皮膚が腐り始めているため。
●膣内から蛆の発生⇒腐敗臭によるハエの仕業
こんな感じになるのではないかと思います。
しかし、考えてみると血液循環は行われていないのに考えたりすることができるのはこれいかに。
やはりゾンビウイルスによる特殊な事象が起こっているとかんがえるのがよいのかもしれません。
そしてこの項目のタイトル「人体が内側から腐るか外側から腐るか」についてですが、当然内側から腐敗していきます。
上でも少し触れていますが、最初に腐敗が始まるのは消化器系である胃や腸から。
サマンサの体の内側は見た目以上にボロボロであったと考えられます。えげつない話ですが。
それでも彼女は3日間活動をし続けていました。
それはまさに、ゾンビ=生ける屍であったと言えるのでしょう。