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【レビュー】「ジョーカー」 2019年度最大の問題作!?

「ジョーカー」と聞くと何を想像するでしょうか?
アメコミ?トランプ?某ゲームのキャラクター?
少なくとも2019年度の後半は、映画のイメージが根付いていたでしょう。
今回は、そんな社会現象ともいえるレベルにまで登り詰めていた『ジョーカー』について書いていきます。


<h4>見たことがなかったジョーカーの一面!</h4>
ジョーカーといえばクレイジーな悪党。そんなイメージがあります。
しかし、本作ではそのクレイジーになるまでを描いているのが面白い所でした。
社会に痛めつけられてきたアーサーが、上級層の人間に復讐を果たしていく流れは痛快そのもの。
やっていることは悪事なのに「もっとやれ、もっとやれ!」と煽り立てたくなるような面白さがありました。
そんな気持ちになるのは、アーサーがそれまで底辺社会で痛めつけられてきた姿を見せられたからでした。
看板で殴られ、理不尽に解雇され、誰からもたすけてもらえない。そんな彼の姿を見ていると、同情せずにはいられません。
そうしたフラストレーションの溜まる様子を見せておいてからの逆襲なわけですから、気持ちよくないわけがない!これがデトックスってやつなのでしょう。
最終的にはクレイジーな悪党になるわけですが、過程がある分、それを受け入れやすくなっていたと思います。
アーサーへの感情移入。それはジョーカーを知り、ジョーカーの狂気を楽しむのにつながっていました。

 

<h4>俳優ホアキン・フェニックスのヤバさ!</h4>
本作でのジョーカー(アーサー)の魅力を語るにおいて外せないのが、主演ホアキン・フェニックスのヤバさです。
とにかくやること為すこと全てがヤバい!突然笑いだすし、笑いながら泣くし、笑いながらキレるしで、喜怒哀楽が無茶苦茶でした。
それでいてアーサーの苦しみはきっちりと伝えてくるのですから、素晴らしい演技力と言うしかありません。アカデミー賞を受賞したのも頷けます。
そんな不安定な前半と打って変わって、危険な雰囲気を漂わせ始めるのが後半からでした。
同じアパートに暮らすソフィーの部屋で佇むシーンや、ランドルに復讐を果たすシーンなんかは、その狂気にゾッとさせられます。
社会的弱者であったアーサーの弱さを一切感じさせなくする、ホアキンの表現力にはただただ圧倒されるばかりでした。
彼の演技によって、これまで見てきたどのジョーカーよりも人間らしく、共感できてしまうキャラクターに生まれ変わっていたと思います。

 

<h4>一度見ただけで終わりじゃない?</h4>
ホアキン・フェニックスの怪演とも呼べる演技のおかげで何度見ても楽しい本作。
けれど、それ以外にも複数回見る面白さがありました。
それがラストシーンでのアーサーと精神科医の会話シーンです。
アーサーが「面白いジョークを思いついた」と告げて終わりを迎えるわけなのですが、このシーンがいろいろと考えさせるんですね。
全てが妄想?途中からが妄想?これから起こそうとしている?と視点によっては、違う見え方がしてきます。
いろいろと考察して、この作品を見た人と意見を交わしたりできるのも楽しい所なのだと思います。
そうは言っても、内容が伴っていなければ、いくら考察が捗っても何度も見ようとは思えません。
演出、演技、映像、音楽etc...作品のクオリティが高いからこそ、何度も見ても楽しめるのでしょう。(まだ2回しか見てませんが……)
一度見ただけで終わらない、長く楽しめる本作は、名作と呼ぶにふさわしいと思います。


<h4>ここを知っておきたい!</h4>
今回注目するのが、作中でも印象的な階段のシーン。
話題となったので知っている方も多いかと思いますが、あの階段は実在しています。
場所はニューヨーク市ブロンクスシェークスピア・アベニュー1165番地に位置します。
多くの観光客が訪れることもあってか、Googleマップで「Joker Stairs」で検索すると一発で出る知名度に。
インスタグラマーなどが騒がしいことからブロンクス区の住民がキレ気味とニュースにもなっていました。
こうして思わずマネしたくなる要素が詰まっているのも『ジョーカー』の面白い点でしょう。
かといって、突然笑いだしたりタイムカードを拳で打ち出したりしたら社会的に死んでしまいます。
マネするならトイレの中でひっそりと踊るくらいにしておきましょう。


<h4>まとめ</h4>
これまでジョーカーといえば「正義=バットマンと対を成す必要悪」でした。
けれど、本作に限っては「弱者が淘汰される体制を崩壊させるための必要悪」であったように思えました。
それは本来のジョーカーのコンセプトとは異なる、ダークヒーロー像でした。
そんな邪道なスタイルを取った本作は『ジョーカー』というタイトル通りの作品と言えるのでしょう。