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【レビュー】さらば青春の光

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青春とはなにもいい思い出ばかりではない。
時にバカをやり、時に傷つく。後から振り返ると「なんでこんなことしたんだ?」と思うようなことさえある。
けれど、青春時代が光り輝いていた事実に変わりはない。
そんな青春の輝きと、後悔を描いたのが今回レビューする『さらば青春の光』である。

 

この作品、1960年代のイギリスの時代色が濃く描かれていた。
というのも、「モッズ」に所属する青年ジミーが「ロッカー」との対立の末に、大人になるということを学ぶからである。
今時、スーツとモッズコート(M-51)を着て、バックミラーをわんさか付けたスクーターで街を疾走していれば、指さして笑われSNSに挙げられるだろう。「ロッカー」も然り。
とはいえ、それが当時の若者の流行であったことは明らかである。
自らの仕事をほっぽり出して、危険も顧みず「やられたらやり返す」の精神で挑むのだ。

その熱意は本物と言うしかあるまい。

 

そんな熱意は、冷めた目で見ればバカバカしく思えるかもしれないが、少なくとも私には光り輝いて見えた。
スーツをオーダーメイドで新調し、バイクを大切な宝物のように整備する姿は微笑ましい。

大麻を吸うのは、微笑ましい……とは流石に言えないが、やりたいことやる姿は若者らしさが感じられる。
終盤に巻き起こるデモのエネルギッシュさは、やっていること自体は間違っていても眩しくさえ思えた。

それ故に、ジミーが挫折と成長を迎える展開には素直に応援が出来る。
親から勘当され、仕事はクビになり、彼女は寝取られ、バイクは車でペシャンコにされ……これでもかと、現実を突きつける様は痛烈だ。

 

オマケに、外面はカッコよく決めている「モッズ」のエースは現実社会に出ればただの荷物持ちなのだから流石のジミーも目を覚ます。
ただ、彼の理想が崩壊していく様を決して悲観的に見せていないのが面白い所である。
ジミーの胸中を爆発させたかのように、パンクミュージックが掛かるのだ。しかも、ラストシーンまで、ほぼノンストップで3曲も。
そのおかげか、彼の悲観に暮れる様子すらも輝いて見える。ラストシーンでの「モッズ」との決別には、彼の成長に拍手を送りたくなる爽快感さえあった。
まさに青春叙事詩と言えるだろう。

 

さらば青春の光』は公開からおよそ40年の月日を経て、デジタルリマスター版として2019年に劇場で公開された。
それはこの作品が青春の思い出と同様に、色あせない物だということを思わせた。
青春はいつかは決別するものであるし、戻らない。けれど、その光が失われることがないことをこの作品は教えてくれる。
人が青春時代にバカをやり、成長し続ける限り、この作品は光り続けるのだろう。