【レビュー】人間の時間(ネタバレあり)
「人は生まれながらに罪を持つ」
アダムとイブの時代から人間に課せられたこの「原罪」は、様々な映画や小説などの創作物で取り扱われて来ました。
そんな「原罪」を『殺されたミンジュ』(2014)や『The NET 網に囚われた男』(2016)などでメガホンを取ったキム・ギトクが監督。
人間、空間、時間から物語を描いたのが今回レビューする『人間の時間』です。
と、ここまで壮大な物語のように書きましたが、実はこの作品、大半の時間を人間同士の争いごとに時間を裂いています。
謎の空間に取り残された軍艦に乗っていたクルーズ客たちが、己の欲望を爆発させる姿を淡々と描いているんですね。
で、これがイマイチでした。
人間の罪深さを描きたかったのか分かりませんが、とにかく登場人物の行動が極端過ぎます。
すぐ人に突っかかるし、殴るし、猿のようにレイプするし、癇癪起こすしで、登場人物誰にも感情移入できませんでした。
「人間の罪深さを体感させる」という意味では成功なのかもしれませんが、感情移入できないと単に作品がつまらないです。
長々と乗員たちによる食料争奪戦が繰り広げられるのを見ているのはまさに地獄。
見ているこちらが暴動を起こしたくなる気分でした。
そんなつまらない中でも救いであったのがツッコミが満載なところです。
軍艦が遭難する前からおバカ映画ばりに民度が低いことが明かされていたため、真面目に見るのを諦めてツッコミどころを探し始めれば、最低限は楽しむことができました。
これ、B級映画の楽しみ方ですけど本作にはいい感じにヒット。
B級パニック映画として、押さえるべきお約束を結構しっかりと押さえていることもあってか、割と楽しめました。
(アホみたいな行動ばかり取る登場人物たち、取って付けたような舞台設定、超常現象染みたミラクル、取って付けたようなエログロ描写などです)
私が本作を見る前に注目していたのが日本人俳優の活躍でした。
その活躍はというと……これまたガッカリ。
チンピラ風情に殺され海に捨てられるオダギリジョー、レイプされまくる藤井美菜。これを見て何を喜べばいいのでしょう。
一応、藤井美菜は主人公ということで最初から最後まで出演していますが、印象的な活躍も演技もなく、これなら死に役の方がまだ見せ場があったのではないかとも思えました。
そんなガッカリさは、ラストにまで及んでいました。
そのラストとは、サバイバルと化した軍艦の中、生き残った藤井美菜(イブ役)をその息子が襲うというものでした。
性教育とか犯罪とかと無縁だった息子がレイプ願望を抱く、人間の本能的なのを見せるオチはなんとも微妙。
「原罪」を取り扱っているため、ストーリーに一貫性はあるのですが、見終わったあとの感動も学びも、もちろん面白さもないという結末でした。
ただただ「ふーん」という思いしか残らない薄味なラストであったと思います。
振り返ってみると残念なシーンは記憶に残り、その他のシーンは記憶に残らないという本作。
やりたいことはなんとなく分かるのに、盛り上がらないという、スッキリできない作品でした。