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【レビュー】スタング(ネタバレあり)

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人間にとって蜂は恐ろしい存在です。

刺されたら最悪死に至る毒性、集団で攻撃を仕掛けてくる獰猛性には、脅威を感じずにはいられません。

そんな蜂がもし巨大化したら……?

そんなアホな想像に取り憑かれた人間たちが作ったのが、今回レビューする『スタング』です。

 

さて、設定からして既に駄作感ただよっている本作ですが、意外と面白かったです。

その面白さの理由は、ひとえに本筋である蜂の暴走するシーンが多かったからでしょう。

本来、こうしたパニックものは、パニック開始→隠れて時間稼ぎ→ラストといったようになるのですが、本作ではその時間が至って少なめ。

次から次にテンポよく話が進んでいくため退屈することがありませんでした。

 

その大きな理由のひとつとなるのが、蜂の設定です。

序盤は、普通のスズメバチを一回りでかくしたくらいの蜂が大量に襲いかかってくるだけでした。

しかし、奴らは人を刺すと体をのっとるという能力を有しているんですね。

そのため、蜂に襲われるパニック+ゾンビ映画のようなパニックも楽しめるようになっていました。

外に出れば蜂に追われ、中に籠れば感染を疑われるという美味しいところ二枚取りをしているのですから、テンポがよくなるのは必然と言えるでしょう。

 

B級パニック映画お約束のたまに挟まるコメディ要素もありました。

これは正直普通です。狙って入れたようなコメディ要素は、笑えるというより、とりあえず入れておいた感が強かったと思います。

逆に「刺されたら感染する」という設定を生かして、犬が蜂化していたり、牛が蜂化していたりといったダークなギャグ(?)は、個人的には好みでした。

ああいった、悪趣味だけど笑えてしまうようなさじ加減は素晴らしかったと思います。

 

そうした悪趣味な要素が光ったのは、クリーチャーの造形のよさにありました。

本作は「蜂に刺されると寄生される」という設定があることから、刺された人間は徐々に蜂化していきます。

その過程……体が異常を起こし、蜂が体内を駆け回り、肌を食い破り、人間の体を支配するという描写を細かく見せているんですね。

そのグロテスクさは、ある意味芸術!

「どこに力を入れているんだ」とツッコミを入れずにはいられない面白さでした。

どの個体も変形の仕方が異なっていたりと、見せ場に対して妥協をしない姿勢が感じられました。

 

ストーリーだけ見れば、クリーチャーが現れ、一人ずつ死んでいき、最後は爆発+αで締めるという至って普通のB級映画の展開であった本作。

けれど、設定の工夫やクリーチャーへのこだわりによってオリジナリティを見せていました。

没個性の駄作が生まれまくるB級映画の中でも、楽しめる部類の作品でした。