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【レビュー】ライフ(2017)(ネタバレあり)

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「宇宙生命体は存在するか否か」
それは古今到来議論されてきたことですし、おそらくこれからも議論されるでしょう。
そんな宇宙生命体に関する、発見と接触、暴走を描いたのが、今回レビューする『ライフ』です。
もちろん堅苦しいSFではなく、エンタメSF映画となっています。

本作は研究していた生命体"カルビン"が逃げ出し牙を向くという、よくある(?)パニックもの。
アメーバのような半透明で軟体な体を持つ火星の宇宙生命体を前に、宇宙船クルーが1人ずつ減っていく展開は王道的です。
ただ、面白いのはその生命体が成長していることにあります。
人間の体を取り込むことで、大きさや力の強さ、知能といった機能がどんどん向上していくんですね。ここにオリジナリティがありました。
人を襲うごとに醜悪で凶暴な生命体へと進化していく恐怖は、これまでにない斬新な設定であったと思います。

そんな生命体に振り回される人間たちの動向も本作の見所のひとつでした。
基本的に、本作での人間の立ち回りは後手後手なんですね。
「あの時ああしてれば……」なんていう後悔が、行動する度に出てきます。
これ、一見すると登場人物たちのダメな所ばかりが際立って悪い点に思えるかもしれません。しかし、世紀の発見を果たした人間の行動として見れば自然で楽しめました。
未知への好奇心や「まだどうにかなる」と成果を捨てられない登場人物たちの思考はリアルだったと思います。

そうした登場人物たちを演じた俳優たちが豪華なのも面白い点でした。
ジェイク・ギレンホール(デビッド役)、レベッカ・ファーガソンミランダ役)、ライアン・レイノルズ(ローリー役)と、旬の俳優が揃っていました。
日本からは真田広之(ショウ役)が参加しており、個人的には彼らが「あーだこーだ」とやっているだけでもなかなかに楽しかったです。
ただ、基本的には"カルビン"から逃げ回るのが主となっているため、やや物足りなさを感じてしまう所もありました。
それでもギレンホールとファーガソンには、ラストシーンで見せ場があり、キャスティングした最低限の利点はあったかと思います。
それよりも衝撃的であったのがラストの展開でした。
こうした宇宙生命体との戦う映画ではたいていが人間側の勝利で終わります。
しかし、本作では完璧なバッドエンドで終わるんですね。
その見せ方がまた秀逸。
デビッド自らが犠牲になることで"カルビン"を宇宙空間へ送り、ミランダが地球へ帰還した……と見せかけて実は逆というのはなかなかない展開でした。
しかも、地球に"カルビン"が行くのは作中でもずっと言われてきた最悪の展開。そのために、ほとんどのクルーが犠牲になっていたことも考えると本当に救いようのないラストです。
普通、ここまでのバッドエンドは、発想があってもなかなか手を出せないもの。
実際にやったということも含め、衝撃的なラストでした。

 

豪華俳優を揃いも揃えてバッドエンドへと叩き落とした本作。

その清々しいまでの突き落としは、ある意味記憶に残るものとなりました。