【レビュー】イップ・マン 葉問(ネタバレあり)
映画のジンクスとして「2作目は駄作になる」というものがあります。
1作目の時点で続編を想定していないなら尚更。
今回レビューする『イップ・マン 葉問』はそんな条件に当てはまっていながらも成功を収めた作品です。
ストーリー
1949年。
イップ・マンは、妻と息子と共に佛山を離れ香港へ移住していた。
そこで詠春拳の武館を開いたもののなかなか弟子は現れず一家は貧乏生活を余儀なくされていた。
しばらくして、イップの元に青年ウォン・レオンが現れる。
彼を弟子としたイップであったが、レオンは洪拳の門下生と問題を起こしてしまう。
感想
素晴らしいアクションとストーリーで魅了してくれた前作。
「あれ以上のものは無理だろう」と思っていましたが、それを上回ったと言っても過言ではない出来のよさでした。
中でも良かったのがイップの立ち位置。
前作では、弟子をとらず戦うといったら自分の信念を貫き通す時くらいでした。
しかし、本作では弟子がやらかしたケンカに入り込まなくてはならなかったり、弟子のせいで余計な出費がかさんだりととにかく振り回されていました。
つくづく弟子をとる責任は重大なんだと実感させられる光景でしたね。
で、お金の少なさもまたイップを苦しめていました。
前作でも戦争の影響によって極貧生活なんてことがありましたが、それと同じくらい大変そうでした。
家賃が払えず居留守を使ったり、保釈金を友人に借りたり、武館を開く会員費的なものを払えなかったりと、終始苦しんでいた印象です。
しかし、そこはお人好しのイップ。
弟子たちから稽古代を貰わなくてはいけないのに「足りないなら今度でいいから」なんて言っちゃう優しさを見せるんですね。
やっぱり、こういう所を見せられると好感が沸いてきますよ。
弟子が何かやらかしても尻拭いをしてくれますし、弟子たちに慕われるのも納得の人格者でした。
しかし、そんなイップでも感情を高ぶらせる瞬間はあります。
それが本作のボスでもある西洋人(イギリス人)の存在でした。
ボクサーのツイスターは本当に根っからの悪で擁護のしようもありません。
前作のボスであった三浦閣下は、イップの仲間を痛め付けて殺すことはあっても、まだ武人に対する敬意を払っていて許せる悪役でした。
しかし、本作のツイスターは敬意なんて一切なし。
むしろ、誇りをかけて戦った男を「弱すぎて死んでしまった」なんて言うのですから許せません。
あそこまで悪意あるキャラクターを作れたのはある意味凄かったですね。
そんなうっぷんを晴らしてくれるのが、やはりドニー・イェン(イップ・マン)によるアクション。
今作でも、弟子を守りながら大勢の敵と戦ったり、武館主たちと連戦をしたり、ボクサーと対戦したりと見どころ満載でした。
中でも盛り上がったのが、武館主たちとの連戦です。
丸テーブルの上という狭い&不安定な足場の中での戦いは、接近戦だけに息をもつかせぬスピーディーな展開が最高に熱かった!
しかも連戦の最後を締め括るのは、レジェンドでもあるサモ・ハン・キンポー(ホン役)。
二人の戦いの決着を含め、最高に熱くて盛り上がる戦闘シーンでしたね。
そのサモ・ハン・キンポー演じるホン師匠がツイスターに敗北して命を落とすというのが、本作においてショッキングなシーンです。
しかし、これを通して作中にイップ・マンがレオンに語る「いつまでも最強ではいられない」が体現されているのですから皮肉な話です。
ホン師匠の死を通して、サモ・ハン・キンポーからドニー・イェンへのアクション俳優世代交代を感じさせるのは、切ないながらも良くできていました。
アクションとストーリーの面白さを1作目とは違う形で表現していた本作。
特にホン師匠とイップ・マンの関係は素晴らしかったです。
長きに渡る歴史を持つ中国武術の片鱗を見ることができた気分でした。