【レビュー】名探偵ピカチュウ(ネタバレあり)
近年のハリウッド技術は、凄まじい領域にまで達しています。
CGを使えば、空間、物、人まで作れてしまうほどのクオリティです。
そのため、ゲームの空間を再現するなんてことも不可能ではありません。
今回レビューする『名探偵ピカチュウ』は過去の名作ゲームポケットモンスターの世界をそのまま再現した映画でした。
やはり最大の見所であったのはポケモンの存在です。
人間とポケモンが共存する町「ライムシティ」。ここを大量のポケモンが闊歩している映像だけで、唯一無二でインパクト大でした。
さらに驚きなのはその種類の多さ。
新旧問わず、数えきれないほどのポケモンが登場していました。
もちろん、適当に登場させている訳ではなく1体1体の体格の大きさから毛や肌といった質感、動きのひとつひとつにまで個性を持たせているのですからすごい。
ポケモンに対する愛が感じられる映像には最初から最後まで引き込まれました。
そんな中でも、ひときわ目を引くのがピカチュウです。
ポケモンを知らないという人でもおそらく知っているであろう、黄色い電気ネズミの存在。
そこへ探偵特有のシャーロックハットをかぶっている姿は愛くるしいばかりでした。
リアルな体毛と動物染みた目は、初めこそイメージとはズレていましたが、そのうち慣れてしまえます。
見た目の可愛さとは裏腹の渋い声、カフェイン中毒、毒舌ふくめ最終的にはいいキャラと思えました。
ただ、一言いっておきたいのは「探偵要素薄いじゃん」ということです。
探偵と言っている割にはほとんどティムが問題を解決していましたし、名探偵にはほど遠かったかと。
彼の記憶が事件を解く重要な鍵になっていましたし「重要参考人ピカチュウ」なら納得できたのかもしれません。
そんな感じでゆるーい謎をゆるーく解決していく本作。
足で手がかりを稼いで解決に導くという意味では探偵っぽくはありましたね。
どの手がかりにもポケモンが関わってきていたのは良かったです。
そのカギともなるポケモンがミュウツーであったのも新旧世代問わずで良かったと思います。
もし知らなくても「とにかく強い」、「悪そう」という印象はしっかり持てるようになっていたのがいい塩梅でした。
結局、悪いのは身勝手な大人という結末はポケモンファンも傷つけない無難な落ちであったと思います。
ポケモンを身勝手な理由で使う人間がいる一方で、ティムとピカチュウが信頼を深めていくのがストーリーでは印象的でした。
近づいては離れ、離れては近づいていく二人の関係は、どこかで見たような展開。
けれど、それを人間とポケモンに置き換えるだけでとてもユニークで面白いのですからズルいです。
ポケモンであることの利点がしっかりといかされたストーリーであったと思います。
こうしたキャラへのこだわりが見えるからこそ、戦闘描写は少し惜しかった思いがありました。
トレーナーが特に技名も叫ばずに勝手にポケモンが争うのは、ポケモンっぽさがなかったんですね。
せっかく、ティムとピカチュウの信頼が生まれていたのに、一緒に戦っている感じがしないのは実に惜しい気がしました。
技の再現度や迫力は満足であったことに変わりありませんでしたけどね。
世界観や映像、小ネタなどなど、あらゆる部分でポケモンへの愛が見られた本作。
トドメはゲーム風のエンディングで締めるというサプライズも込めており、本当に最初から最後までポケモン尽くしでした。
こうした愛ある映画ならぜひとも他のゲームも映画化して欲しいものですね。