【レビュー】夕陽のガンマン(ネタバレあり)
西部劇といったら『荒野の用心棒』
そんなイメージが強く付いています。
クリント・イーストウッドによるハードボイルドな姿は、いつの時代に見てもただただカッコいいです。
そのハードボイルドな男が二人になったら……?
そんな男の願望を叶えてくれたのが、今回レビューする『夕陽のガンマン』です。
(精神的)前作『荒野の用心棒』では、縄張り争いをする二つの勢力から金をせしめたイーストウッド。
そんな流れ者の彼が今回狙うのは賞金首たちに掛かった懸賞金です。
しかし、前作以上に敵の数が多いという事もあって、リー・ヴァン・クリーフ演じるモーティマー大佐と組むのが今作でのオリジナル要素となります。
で、面白いのが手を組むようになるまでのやり取り。
イーストウッドがクリーフの足をわざと踏んだり、帽子を吹っ飛ばして遊んだりと「俺の方が凄いんだぜ?」感を出してくるんですね。
対してクリーフの方も負けじと応戦。その姿はまるで喧嘩をする少年のようでした。というか、子供たちに「僕たちと同じことしてる」とツッコミを入れられたりしていましたからね。
男というのは負けず嫌いのめんどくさい生き物なんですよ。
こうしためんどくささを表すシーンは作中随所で見られ、敵を挑発して窮地を作ったりなんて日常茶飯事でした。
しかし、それに全く動じずに持ち前の銃の腕で火の粉を払いのけるのですからやっぱりカッコイイ。
銃の腕前を披露するだけで手を引く敵もいるくらいですからね。
賞金首グループを一網打尽にするため手を組んだイーストウッドとクリーフは、グループを中と外から潰すことにします。
しかし、敵もなかなか一筋縄には行きません。
銀行強盗の現行犯で捕まえるハズが裏を掛かれて逃走されたり、強盗した金を盗もうとしたのを感づかれたりと、ピンチになるシーンが多くハラハラさせられました。
とはいえ、持ち前の冷静さと銃の腕で切り抜けてしまうのが、西部劇のお約束。最後には痛快に敵を出し抜いてくれていました。
本作で印象的であったのが、イーストウッドとクリーフの立ち位置です。
冒頭にも書いたようにイーストウッドが狙うのは懸賞金なのですが、クリーフの場合は復讐でした。
個人的なイメージなのですが、西部劇で主人公が敵を狙う目的は復讐が多い気がします。
むしろイーストウッドのように、純粋な金狙いなのは珍しい気さえします。
そういうこともあってか、本作ではクリーフの方が主人公感が強いんですね。
で、それはおそらく監督のセルジオ・レオーネ自身も狙ってやっているのだと思います。
例えば、二人が初めて顔合わせするシーンではクリーフの視点から謎めいた男イーストウッドが接触してきたような描き方をしていました。
また、敵の親玉インディアン(演じたジャン・マリア・ヴォロンテは『荒野の用心棒』でラモンも演じていました)を倒すのもイーストウッドはサポートに徹し、クリーフが復讐を果たすという結末を迎えていました。
なにより、作中冒頭のクレジットでは「with Clint Eastwood」と、あえてなのか「with」が付けられているんですね。
こうしたもろもろの要素もあって本作は、一人の男の復讐劇とそこへ居合わせた流れ者の物語という印象がありました。
どちらが主人公にしても、二人ともカッコイイことに変わりはないんですけど。
そんなカッコイイが詰まりに詰まった本作。
二人のファッションの違いもまたカッコいいです。
イーストウッドは、メキシカンポンチョとカウボーイハットという古き良きガンマンスタイル。茶色が基調となっています。
対してクリーフは、ダスターコートにカウボーイハットというフォーマルなスタイル。シャツ以外は黒基調です。
まったく異なるスタイルを持つ二人ではありますが、どちらも着こなしとしてはバッチリ。
銃を抜く時に翻すのがまたカッコいいんです。
ヴィジュアル面でも楽しませてくれることもあってか、会話シーンだけでも幸せを感じていられる魅力がありました。
クリント・イーストウッドとリー・ヴァン・クリーフ。二人の西部劇ヒーローの魅力を完璧に引き出していました。
また、本作でのノウハウが精神的続編となる『続・夕陽のガンマン』で生かされることもあり、片方見ればもう片方も見たくなる、ついでに『荒野の用心棒』も見たくなるという楽しみ方もあります。
とはいえ、イーストウッドとクリーフの二人を好きになってしまうと『続・夕陽のガンマン』は思う所もあります。
セルジオ・レオーネ監督の「ドル箱三部作」において、一作目からの進化と三作目へのつなぎとして欠かすことの出来ない二作目でした。