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【レビュー】怒りのガンマン/銀山の大虐殺(ネタバレあり)

リー・ヴァン・クリーフといえば、西部劇で有名な俳優です。
時に悪役として、時に善玉として活躍していましたが、どちらにも共通して言えるのが渋くてカッコいいということ。
そんなリー・ヴァン・クリーフが、ミステリアスな元保安官に扮するのが『怒りのガンマン/銀山の大虐殺』です。

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ストーリー

西部の町シルバーベルに、おたずね者の男フィリップが潜伏していた。
賞金稼ぎたちがその首を狙う中、駅馬車で村に現れた元保安官クレイトンは、フィリップを助け、町を脱出させる。
やがて合流した二人は、フィリップの無実を証明するため、事件の起きたサクソンシティを訪れる。

感想

個人的に最もリー・ヴァン・クリーフがカッコいいと思うのが『夕陽のガンマン』(1965)のダグラス・モーティマー大佐だと思っています。
その頃と比べると、本作では若干頬が痩けて年を取った印象を受けました。

とはいえ、それでもカッコいいのがリー・ヴァン・クリーフなんですね。
彼を象徴していると言っても過言ではない黒のハットとコートを身に纏い、どんな困難な状況であっても冷静さを失わないクールな姿は男の憧れる渋さがありました。
そんなクリーフ演じるクレイトンは、登場シーンからカッコいい!
西部劇ではお馴染みの、帽子のつばで隠れた目が露になるシーンから始まり、膠着状態となったおたずね者フィリップと賞金稼ぎたちの争いを瞬時に解決する活躍ぶりには痺れました。
その後も銃を奪われたかと思ったら実は弾を抜いていたり、悪玉であるサクソン一家を話術で牽制したりと、やたらめったら銃を撃つのではなく冷静に場を収めるのがクリーフの渋さとマッチしていて素敵でした。
また、本作では「サクソン一家のボスを暗殺したのは誰なのか?」というのがストーリーの核となっており、その秘密を知っているクレイトンの謎めいた行動が面白くもありました。
フィリップが絞首刑になりそうな場面に現れ「犯人はこの場にいる」と探偵染みたセリフを言ってみたりと、銃の腕だけでなく存在だけで魅力を存分に見せていました。

そんなクレイトンと同じように活躍するのが、アルベルト・デンティス演じるフィリップでした。
基本的に、銃を撃たないクレイトンに対して銃を撃ちまくり悪を制する姿はある意味西部劇の王道を行く男であったと思います。
一方で、クレイトンから馬を奪ったりと一筋縄では行かない人物でもあり、その暴れっぷりはもう一人の主人公ポジションと呼べる存在感でした。

そうした登場人物の濃さも本作の魅力のひとつでした。
例えば悪党。
本作ではサクソン一家のデヴィッド、イーライ、アダムの三兄弟が君臨していました。
彼らは物語の中盤、サクソンシティから登場するわけなのですが、存在感はかなり強かったです。
見た目からして悪党な顔立ち、外道とも言える暴虐非道な振る舞いなどはまさに悪党と呼ぶしかありませんでした。
また、三兄弟ともがそれぞれ違うキャラ(見た目も性格も)をしていたのも覚えやすくて良かったのだと思います。
そんな存在感のある3人とクレイトンが決闘をするラストシーンは『ワンス・アポンア・タイム・イン・ザ・ウェスト』(ウエスタン)の冒頭のシーンを連想させる迫力がありました。
結果はおおかた予想ができていても楽しめるのですから西部劇の面白いところですね。


ただ銃を撃つだけでなく、人間同士のやり取りによって物語を面白くしていた本作。
そこで活躍するリー・ヴァン・クリーフの魅力は年を重ねていても充分に楽しめるものでした。
銃撃戦よりも登場人物の個性やそれを演じる俳優を見るのが楽しい作品でした。