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【レビュー】WAVES/ウェイブス(ネタバレあり)

青春に挫折は付き物です。

大なり小なり、それを乗り越えることで人は成長すると言えます。

今回レビューする『WAVES/ウェイブス』は、挫折と成長、それに影響される人々を描いた青春映画です。


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本作は開始直後は正直言って面白くなる気が全くしませんでした。

それもそのはずで主人公のタイラーは、レスリングで活躍をし、恋人であるアレクシスとは良好な関係を築き、友人も多く、裕福な家庭で、両親との仲も良い、という問題も不自由もない生活を送っていたからです。

「こんな完璧な男でドラマが描けるのか?」というのが、初めに受けた印象でしたね。

 

そうした「完璧」が崩壊するのは、タイラーのケガしていた左肩が重症であることが判明してからです。

ケガを黙っていたことから症状が悪化し、でレスリングを出来なくなったタイラーは、両親と疎遠に。

そこへ追い討ちをかけるように、アレクシスが妊娠していることが発覚します。

まさに、どん底へとまっ逆さま。序盤の明るい作風が嘘のように暗くなる様子には圧倒されるばかりでした。

 

そうしたフラストレーションが爆発したことから、タイラーはアレクシスを殺してしまい警察に追われる身となります。

絶望するタイラー、嘆く両親の姿は見ていても痛々しいものがありました。

けれど、そうした怒濤の展開は「次はどうなってしまうんだ!?」と好奇心を刺激するのですから皮肉なものです。

あそこまでテンポよく転がり落ちてしまうと、逆に見ごたえを感じてしまう不思議。

息をもつかせぬ転落劇は見ものでした。

 

そうしたストーリーを盛り立てていたのが演出です。

なんと言っても本作は色彩が鮮やか。

背景や室内の内装、ネオンの光などを利用して、さまざまな色合いを演出していました。

他にも、序盤にタイラーがレスリングで試合をしていたり、若者らしく騒いでいたりするシーンでは、彼の周りをぐるぐると回るダイナミックなアングルで撮影されているなど、状況によって演出を使い分けているのも印象的でした。

なにより驚かされたのが、画面の比率です。

タイラーが追い込まれていくに連れて、画面のアスペクト比はだんだんと狭いものへ。

タイラーが感じている息苦しさを、見ている私たちにもそのまま伝えてくるかのような演出を見せていました。

 

このように、タイラーたちへの感情移入をさせるための演出に凝っていたのがすごかったです。

その最たるが挿入歌でした。

本作、ポスター(記事の最初にある画像)にも書いてあるように31曲の曲が売りのひとつとなっています。

それだけに、作品とのマッチが素晴らしいです。

シーンごとに登場人物が抱えている重荷であったり、感情であったりをストレートに伝えているんですね。

また、若者が好むリズム・アンド・ブルース(R&B)やラップが積極的に取り込まれており、彼らの感情をより近くに感じさせてもいました。

さながら登場人物が歌わないミュージカルとでも表現すればいいのでしょうか。

それくらい、登場人物の感情、状況にマッチしていました。

新感覚な演出方法は、作品に常に惹き付ける吸引材となっていたと言えるでしょう。

本作は開始直後は正直言って面白くなる気が全くしませんでした。
それもそのはずで主人公のタイラーは、レスリングで活躍をし、恋人であるアレクシスとは良好な関係を築き、友人も多く、裕福な家庭で、両親との仲も良い、という問題も不自由もない生活を送っていたからです。
「こんな完璧な男でドラマが描けるのか?」というのが、初めに受けた印象でしたね。

しかし、その「完璧」が崩壊するのが本作のポイントであり、面白い所でもありました。
そのきっかけとなるのが、タイラーのケガをしていた左肩です。
このケガを治療せず放置していたことから、症状が悪化しレスリングが出来なくなってしまいます。
それが原因で両親とも疎遠に。
そこへ追い討ちをかけるのが、アレクシスの妊娠発覚です。
まさに、どん底へとまっ逆さま。序盤の明るい作風が嘘のように暗くなる展開には圧倒されるばかりでした。

そうしたフラストレーションが爆発したことから、タイラーはアレクシスを殺してしまい警察に追われる身となります。
絶望するタイラー、嘆く両親の姿は見ていても痛々しいものがありました。
けれど、そうした怒濤の展開は「次はどうなってしまうんだ!?」と好奇心を刺激するのですから皮肉なものです。
あそこまでテンポよく転がり落ちてしまうと、逆に見ごたえを感じてしまう不思議。
おそらく、彼が転落していったとしても最終的に立ち直り、幸せを掴むのであればここまで記憶に残るインパクトはなかったでしょう。
そういう意味では、彼の転落劇は本作の見どころのひとつと呼べるのでしょう。

もうひとつ見どころであったのが、視点の切り替えでした。
本作は2部構成となっており、前半はタイラー、後半は彼の妹であるエミリーの物語になっているんですね。
で、後半に何が描かれているのかというと、タイラーの影響によって崩壊した家族の様子が描かれています。
殺人犯の妹として学校で浮いてしまったエミリーの姿や、それまでは仲の良かった両親たちがお互いを責める様子などは、タイラーが捕まっただけで物語は終わらないリアルさを感じさせました。

しかし本作が素晴らしいのは、物語は終わらないリアルさの中に、憎しみと愛を解いたストーリーを取り入れていたことです。
エミリーの彼氏となるルークの父親の死を挟むことによって、家族である限り、たとえ憎しみを抱くことがあっても愛は失われることがないことを感じさせていました。
それはもちろん、エミリーや彼女の両親にも当てはまっており、愛が崩壊しかけていた家族をつなぎとめる役割を担っています。
作中、教会で神父が憎しみを愛に変えることについて説くシーンがありました。
そこで「Hateは四文字Loveも同じ四文字」というこじつけにも近い説教をしており、聞いた時には「なんじゃそら」となりましたが、終わってみるとなんとなく納得。
憎しみと愛の表裏一体さをひしひしと感じました。

こうした美しいストーリーを盛り立てていたのが演出です。
なんと言っても本作は色彩が鮮やか。
背景や室内の内装、ネオンの光などを利用して、さまざまな色合いを表現していました。
これにより、絶望的な状況でもどこか美しさが感じられ、将来への希望が残されていることを連想させました。

他にも、序盤にタイラーがレスリングで試合をしていたり、若者らしく騒いでいたりするシーンでは、彼の周りをぐるぐると回るダイナミックなアングルで撮影されているなど、状況によって演出が使い分けられていたのが印象的でした。

こうした独特な演出の中でも、驚かされたのが画面の比率です。
タイラーが追い込まれていくに連れて、画面のアスペクト比はだんだんと狭いものへ。
タイラーが感じている息苦しさを、見ている私たちにもそのまま伝えてくるかのような演出を見せていました。

このように、タイラーたちへの感情移入をさせるための演出に凝っていたのがすごかったです。
その最たるが挿入歌でした。
本作、ポスター(記事の最初にある画像)にも書いてあるように31曲の曲が売りのひとつとなっています。
それだけに、作品とのマッチが素晴らしいです。
シーンごとに登場人物が抱えている重荷であったり、感情であったりをストレートに伝えているんですね。
また、若者が好むリズム・アンド・ブルース(R&B)やラップが積極的に取り込まれており、彼らの感情をより近くに感じさせてもいました。
さながら登場人物が歌わないミュージカルとでも表現すればいいのでしょうか。
それくらい、登場人物の感情、状況にマッチしていました。

青春映画と聞くとラブロマンスやドラマといった、映画ばえしないイメージがあるかもしれません。
しかし、本作はそのイメージから一線を画するものがありました。
視覚的にも聴覚的にも楽しめる「映画館で見て良かった!」と断言できる作品でした。