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【レビュー】宇宙戦争(ネタバレあり)

スティーヴン・スピルバーグ監督といえば、おそらく誰もが知っている映画監督でしょう。

そんな彼の経歴を語る上で外せない作品はいくつもあります。

今回レビューする『宇宙戦争』もまたその内の1作だと言えます。

 

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ストーリー

妻と離婚したレイは妻が実家へ行く間、一時的に長男ロビーと長女レイチェルを預かることとなる。

しかし、突如襲来した宇宙人によって彼らは命懸けの逃走を余儀なくされるのであった。

 

感想

名作も数多くあるスピルバーグ監督作の中でも駄作という意見が多い本作。

しかし、個人的には冒頭でも書いたように、スピルバーグ史を語る上では欠かせない存在だと思います。

というのも、スピルバーグ監督はそれまで(2005年まで)宇宙人が登場するSF作『未知との遭遇』(1977)、『E.T.』(1982)では友好的な宇宙人しか描いていませんでした。

しかし、本作はガッツリ敵対関係。

序盤で「なんだこいつら、敵か?味方か?」と思わせるだけ。

その後にはただただ不条理な殺りくが待っていました。

この、敵か味方か分からない状況下での街の人々の反応もなかなか見もの。

コンクリートの道路に穴を開けた、明らかにヤベーやつがいるにも関わらず、我先にと様子を伺いにいくのは人間の好奇心をうまく表していました。

こうした、未知の存在への好奇心の描き方は、それまで宇宙人SF映画を手掛けてきたスピルバーグだからこそ出来る展開であったと思います。

 

そうした展開は、レイたちが逃げる先々でも見られました。

パニックに陥り暴動を起こし始める人々を見ていると、宇宙人の操る「トライポッド」はもちろん、人間もまた恐ろしい存在であることが分かってくるんですね。

こうした人間の暴走は『未知との遭遇』や『E.T.』でも若干感じさせる描写(宇宙人を追いかけるあまり行きすぎた行動を取る)があり、スピルバーグの描いてきた宇宙人ものの最悪のシナリオを映像化していた感じがありました。

(余談ですが、中盤に燃え盛りながら疾走する新幹線が通過するシーンがあります。あのシーン「一体なにがあった!?」と、想像力を刺激させるシーンで好きです)

 

そんな絶望的な世界を生き抜くため戦うのが、主演のトム・クルーズでした。

しかし、本作でのトムは至って普通の人間。ニューヨーク・ヤンキースの帽子を被り、長男と長女の扱いに手を焼く父親でした。

そのため当然、派手なアクションも超絶的なスタントもないに等しく、ただただ子供と宇宙人に翻弄される存在でした。

とはいえ、反抗期の長男と癇癪持ちの長女の面倒を見なくてはならない苦労人という立ち位置は、新鮮なトムを見ることができて手持ちぶさたにしていたことはありません。

ストレスがピークに達して、ピーナッツバターを塗ったパンを窓に叩きつけるなんていう、ある意味名場面を見れたことも含め、トムが主演で良かったと思います。

 

残念であったとすればオチですかね。

あれだけ絶望的な強さを誇っていた宇宙人たちも、地球の微生物によってバリアを失ったら米軍にフルボッコにされるっていうのはガッカリ。

まるで漫画の打ち切り展開のようでした。

こればっかりは、H・G・ウェルズの原作を読んでみないと、誰が原因かは分かりませんけどね。

 

スピルバーグ監督作としては、低い評価を受けている本作。

しかし、スピルバーグ味溢れる展開はやはり見ていて損はないかと思います。

テレビ放送がある度に見たくなったり、印象的なシーンが多かったりするのも決して悪い映画ではないからでしょう。(個人差があります)

噛めば噛むほど味が出る作品。それもまた、名作なのかもしれませんね。