【レビュー】コロンバス(ネタバレあり)
インディアナ州コロンバスと聞くと、アメリカの都市ということがすぐに浮かぶかと思います。
しかし、「建築の街」と呼ばれるほど、アーティスティックな建築が多いことは知られていません。(私も知りませんでした)
今回レビューする『コロンバス』はそのタイトル通り、コロンバスの建築物の魅力を描きつつ、そこで生きる人々の姿を追ったドラマ映画です。
ストーリー
韓国で本の翻訳を仕事としているジンは、建築についての教鞭をとっていた疎遠の父親が昏睡状態に陥ったことを知り、コロンバスを訪れる。
彼は、病院近くの図書館で働くケイシーと出会い意気投合する。
ケイシーは、建築の職に就くためコロンバスを出たいと思っていたが、クスリ使用の常習者である母親を一人残していくことに不安を覚えていた。
そんな悩みを抱えた二人は、コロンバスの建築物を訪れ、話をすることで、お互いの心に整理をつけていく。
感想
私が建築物の芸術に興味を持ち始めたのは『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』という作品でした。
簡単に説明するなら、フランス人建築家ル・コルビュジエと彼の人生に大きな影響を与えた女性アイリーンとの関係を描いた、要は美術よりもヒューマンドラマの要素が強い作品です。
そんな彼の建築に興味を惹かれた私は、彼が建築したという国立西洋美術館(上野)に足を運んだりもしたものです。
そんなアート建築物への憧れをさらに強める魅力が本作にはありました。
なんといっても注目なのがその切り取りかた。
まるで絵画のように、一ヶ所のアングルからしばらく撮りつづけるという手法を取っているんですね。
面白いのが映像の利点もしっかりとあるということ。
固定されたアングルであっても噴水の水であったり、草木の揺れであったりと、絵画のような切り取りかたでありながらもちょっとした動きが見られます。
そうして絵画とは違う美しさを引き出していたのですから興味を抱かずにはいられませんでした。
本作において大切なのは、この興味を抱かせることにあったと思います。
作中でもカヴリエルがケイシーに、興味を持つことにこそ集中をする、という話をしていました。
これが本作にも当てはまるのだと思います。
要は、芸術的建築物を捉えた長いショットを集中して見れるかどうかで、建築物に興味を抱いているかどうかの指標としていたわけです。
コゴナダ監督としては、当然本作にも建築物にも興味を抱いて欲しいわけですから、興味を惹くような演出が多めであったことは確かでしょう。
そして、本作で色濃く描かれていたのが、ジンとケイシーの関係でした。
父親から離れ韓国で働いているジンと、母親から離れる訳にはいかずコロンバスから出られないケイシーの、正反対な立ち位置、考え方がお互いを引き寄せていく展開は王道的です。
ただ、本作が独特だとすれば、正反対な二人が建築物のアートによって心を通わせていくことでしょう。
建築物を見て美しさを感じる二人が、互いの背負う悩みや考えを話すことで相手を理解していく流れは、本作にしかない独特な味を出していたと思います。
「美しい建物を見る」
それだけで、二人の関係が進展していくことへの説得力となっているのですから面白いものです。
建築物の美しさを伝えるため、映画の利点をフル活用していた本作。
見終わった後に、コロンバスに聖地巡礼に行ってみたいと思わせる、地元の魅力が詰まった作品でした。