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【レビュー】クリスマス・キャロル(1938)(ネタバレあり)

クリスマス・キャロル」といえば、おそらく日本人でも多くの人が知っている名作映画(あるいは原作小説)でしょう。
子供から大人まで教訓となる、お金の裕福さと心の裕福さを説いた内容を考えると当然と言えるかもしれません。
そんな名作をいち早く映画化したのが、今回レビューする『クリスマス・キャロル(1938)』です。

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ストーリー

ロンドンで商社を経営する老人スクルージは、お金持ちでありながらもケチで思いやりのない男であった。
クリスマス・イブの夜、スクルージは一人の従業員をクビにしてしまう。
彼が家へ帰ると、過去・現在・未来の亡霊が現れる。

感想

本編時間69分。
これを聞いてどんなイメージを持つでしょうか。
おそらく「映画としては短い」というイメージを持つでしょう。少なくとも私はそう思いました。
けれど、原作者のチャールズ・ディケンズの伝えようとしたメッセージはしっかりと伝わっていただけに、映画化の価値はあったと思います。

中でも目を引いたのが、過去・現在・未来の亡霊の見せる幻。
CGのない時代、シンプルながらも空を飛ぶような演出や亡霊が消えていくような演出を取り入れているのは驚きでした。
しかも、俳優の演技力もあってなのか妙に自然。あり得ないおとぎ話でありながらもあり得そうな世界観を作り上げていました。

で、この過去・現在・未来のスクルージが見る景色がまた単純ながらも心に刺さります。
過去に見る、失ってしまった子供心。
現在に見る、貧しくても幸せな時間。
未来に見る、心が貧しい故の孤独。
それらをセリフではなく映像中心に描くのですから映画らしい。
スクルージと同じ視点からこれらを見ることで、彼の気持ちを体感することができました。

そんな本作ですが、スクルージ役を演じた主演のレジナルド・オーウェンの貢献度がかなりありました。
序盤の見るからに偏屈で世の中に不満を抱いているような演技と、終盤の穏和で明るい性格となった演技の差はもはや別人。
いかに亡霊たちとの時間が彼の心境を変化させたのかが、演技によって伝わってきました。
町の中の人々が常に「メリークリスマス!」と陽気に振る舞っているシーン含め、見ていて楽しくなる時間でしたね。

トーキー映画が生まれた1930年代に公開された本作。 そのためか、本編に関係のないシーンでも人々の活気のある声があちこちから聞こえてくる気がしました。 クリスマスの時期であろうがなかろうが、その浮わついた気分を楽しめる素敵な作品でした。

クリスマスの名作である『クリスマス・キャロル』を初めて映画化した本作。
初めてなだけに、シンプルで分かりやすくまとまっていました。