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【レビュー】ダンケルク(ネタバレあり)

戦争とは多くの人が命を拾い、多くの人が命を落とします。

その凄惨さを歴史を通して学ぶことはできますが、あくまでそれは数字としてしか見ることはできません。

今回レビューする『ダンケルク』はそんな、戦争の恐ろしさと生き残ろうとする若き兵士たちの思いを最前線で体感することのできる作品です。



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ストーリー

第二次世界大戦初期。

連合軍に属するイギリスはフランスのダンケルク海岸でドイツ軍に追い詰められていた。

30万人以上の連合軍の兵士が取り残される中、イギリス人の青年トミーは生き残るために奔走を始める。



一方、イギリス本土では民間船が徴収される中、ドーソンは息子ピーターとその友人ジョージと共に、ダンケルク海岸の兵士を救うため港を離れる。



そして、空中ではファリアーが戦闘機でドイツ軍と戦いを繰り広げていた。

感想

クリストファー・ノーラン監督が初めて実話を題材にし、初めて戦争映画に手を出したという本作。

上映時間も106分と、近年のノーラン作品と比べればかなり短めに収まっていました。

けれど、彼の個性が無かったかというとそうでもなく、むしろ陸・海・空3つの視点を時系列をずらしながら最終的に同じ舞台と時間に合流させる演出は実にノーラン味溢れるものであったと思います。



で、今回初めてテレビで本作を鑑賞したのですが、やはり全く臨場感が違いました。
トミーを通して見られる死の緊張感であったり、ファリアを通して見られる戦闘の臨場感であったりは、大画面&大スクリーンによる効果は絶大。
まるで自分のことのように手に汗握って見た記憶があります。


中でも大きく異なったのが音でした。

戦闘機の音や銃声など、こだわりにこだわり抜いたことが窺える音は、劇場で見た時、あまりの迫力に驚かされました。

思わず耳を塞ぎたくなるような轟音は、確実にトミーたちと同じ戦場の最前線に連れていってくれました。

また、ハンス・ジマーによる時計の針の音を使った焦燥感溢れるBGMがまた作品への没入感を高めてもいました。

最前線の臨場感と映画的演出のマッチは、本物の戦場により近い体験であったことを覚えています。

テレビだとこうした音の魅力が半減。これだけでも映画館で見る価値のある作品だと痛感させられましたね。



しかし、それで面白くなかったかと言ったらNoでした。

戦場を陸海空の3つの時系列から描いたユニークさも去ることながら、戦争映画に欠かせない青年、中年、老年の戦争への向き合い方をしっかりと描いていたのです。

青年トミーはとにかく生き残るための戦いを見せており、中年のファリアは敵を倒すために全力を尽くし、老年のドーソンは自分たちが始めてしまった戦争の尻拭いのために命を賭けていました。

他にも、フランス兵含めた若者たちのため自らしんがりを買って出るボルトン中佐、戦場へ戻ることを嫌いドーソンたちに敵意を向ける英国兵(キリアン・マーフィー演じる)など、あらゆる立ち位置からダンケルクの救出作戦(ダイナモ作戦)を描いていたのが印象的でした。

戦場で生きた人間、死んだ人間、罪を背負った人間……歴史の教科書では決して知り得ない、1人1人の感情をよりリアルに感じ取れるというのは、本作の最大の魅力であったと言えるのかもしれませんね。







これまでダンケルクを題材にした作品はいくつかありました。
けれど、本作ほど大規模で臨場感溢れる作品はなかったと言えます。
戦争映画や史実を基にした映画でも面白い作品を作れるという、クリストファー・ノーランの新たな可能性を切り開いた作品だったと言えるでしょう。