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【レビュー】ビッグ・マネー 男たちのレクイエム(ネタバレあり)

男たちによる強盗映画といえば裏切りはつきものです。
そのためか知略をつくした心理戦を描いたクライムムービーは意外と多いものです。
今回レビューする『ビッグ・マネー 男たちのレクイエム』は、そんな心理戦を独特な手法で描いた作品です。

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ストーリー

ある競馬場で現金およそ3000万ドルが強奪される事件が起こった。
その一年後、強盗団の一人ボスコが警察官に追い詰められ自殺を遂げた。
彼らを追っていたマノロは携帯電話に"75"という数字をメールで送っていたことを見つける。

5年後。
強盗事件が時効を間際に迎える中、マノロは5年の間に逮捕していたチェマから新証言を引き出そうと躍起になっていた。

感想

率直な感想としては、可もなく不可もなくそこそこ面白い作品という印象でした。
強盗した金を巡るクライム・サスペンスものとしては王道を行っているのですが、それゆえに目新しさがなかったと言いますか……
そこそこ面白いものの、オリジナリティがなさすぎて記憶に残りそうにないというのが、一番の欠点であったと思います。






とはいえ、最初に書いたようにそこそこ楽しめたのは事実。
その面白さは、大きく2つの要素にありました。


まず1つ目が金庫のパスワードの設定です。

本作は、ハイメらが競馬場から盗んだ3000万ドルを5人のメンバーそれぞれが暗証番号を握ることで出し抜けない状況を作り上げていました。

そしてそれを集めるマノロとの攻防はクライムムービーとして純粋に面白かったです。

警察官のマノロが最も欲に溺れていたというの汚さがまたクライム要素をより一層強めていて面白くなっていたと思います。







そんなクライム要素を加速させるのが面白さの2つ目、時系列の入れ替えでした。

本作、この入れ替えを多用しており、何かしらの事象が起こる→その実行に至るまでの回想というような流れが多かったです。

単純な時系列で描くよりも興味の惹き方が強く、現に私が作品の面白い箇所を振り返っても、この時系列の入れ替えがきっかけとなっているシーンばかりでした。



ただ、この入れ替えには少々難点もありました。

それが、起点がどこか分からないということです。

普通にシーンを切り替えるように回想を始めたりするので、見ているのが現在なのか過去なのかつかみづらいことが多々ありました。

その判断材料となるのが、キャラクターの生死なわけですが、そのキャラクターも序盤では掴めないです。

なぜなら、割と見た目が似ているおっさん5人を判別しないといけないから。

もし彼らに「顔に大きな傷がある」とか「サンタクロースばりの髭を蓄えている」とかなら覚えやすいのですが、5人とも中肉中背で、半分くらいが髭を生やしているのですから序盤は誰が誰かさっぱりでした。

一応、冒頭にマノロが捜査情報として顔と名前を紹介しますが、それだけで覚えるに至らなかったですね。(記憶力が悪かっただけかもしれません)

なんにしても、時系列をいじるのなら分かりやすいように何かしらの記号を残してもらいたかったものです。



とはいえ、この時系列入れ替えのおかげで、全滅したかに思えた強盗団のうちチェマとティノが生き残っていたことやハイメの娘が復讐を遂げるという、驚きをもたらせていたので欠かせない要素でもあったと思います。







時系列を組み替え、よりクライム要素を強めていた本作。

取り組みとしては面白かったのですが、ややこしくなってしまい直感的に楽しめなくなるというのは少し難点ではありました。

メキシコ映画ということも含めると、珍しい体験のできる作品だったと言えるでしょう。