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【ネタバレあり・レビュー】パリに見出だされたピアニスト | 今の時代に生まれるピアニストのサクセスストーリー!

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ストーリー

フランス・パリ郊外で暮らすマチュー・マリンスキーは、ピアノの才能がありながらも燻った生活を送っていた。
ある日、彼は駅に置かれたピアノを演奏しているところを国立高等音楽院のプロデューサーであるピエール・ゲイトナーに才能を見出だされる。
乗り気ではないマチューであったが、警察に逮捕されたことから、ゲイトナーに助けを乞うこととなる。
そんな彼に課されたのはゲイトナーのいる音楽院での公益奉仕であった。

感想

チャンスに恵まれて来なかった才能ある青年がチャンスを手にするという絵にかいたようなサクセスストーリーであったこの作品。
努力して、恋をして、師弟関係を築いてと、それこそ王道を行く展開は非常に見易い内容でした。

しかし、本作にも当然ながらオリジナリティはあります。
そのひとつがマチューの生活する環境でした。
マチューの暮らす郊外の都市はお世辞にも整った環境とは言えません。
常日頃から悪ガキ共がたむろしており、犯罪の計画であったり、バイクの曲乗りであったりと危険な香りを漂わせています。
一方、マチューが通うようになるコンセルヴァトワールブルジョアが通う学校です。
外観のオシャレさや洗練された態度を見せる生徒たちからもそれは顕著と言えるでしょう。
そんなわけでマチューにとっては非常に居心地の悪い場所であるコンセルヴァトワール
そこで彼が才能と努力でのしあがろうとするのが、この作品の面白さでした。

とはいえ、一筋縄で行かないのが思春期の厄介な所。
女伯爵(ラ・コンテス)ことエリザベスに叱られてふて腐れたり、自分の代わりがいると知ってコンテストに出るのを辞めると騒いだりと、なかなかの問題児っぷりを発揮していました。
確かにマチューの視点だけから見ると、大人たちのお節介、あるいはプロデューサーとしての力の誇示としてしか写りません。
しかし、実際にはその裏でゲイトナーが己の進退を懸けてマチューの将来を推していました。
そうした、ゲイトナーたちとの関係が少しずつ良好なものへと変化していくのも本作の楽しみのひとつであったと言えるのでしょうね。

そんな本作の最大の見せ場が、やはりピアノの演奏シーンでした。
ハンガリー狂詩曲」やラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」など、美しい曲の数々は思わず聞き入ってしまいます。
それをマチューの高速かつ性格な連弾で弾くのですから演奏シーンは常に鳥肌モノでした。
特にラストのコンテストで見せるラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」は、それまでマチューが練習していたものをフルで聞けるということもあって圧巻の一言。才能に満ちた彼がいかに努力をしてきたのか、数ヶ月間の練習描写はなかったもののそれを感じ取れるものとなっていました。


才能ある青年が努力をして成功するまでを描いていた本作。
才能が見出だされるのがストリートピアノであったり、フランスの実情を取り入れていたりと、王道なサクセスストーリーにも新しさがありました。
今の時代に見るからこそ、受け入れやすい作品でした。