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【ネタバレあり・レビュー】ミツバチのささやき

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ストーリー

1940年のスペイン。
内戦直後の村で暮らす少女アナは、姉イサベルと映画館で『フランケンシュタイン』を鑑賞した。
そこで怪物の存在を知ったアナは、イサベルから怪物が実在していると聞かされる。
それを聞いたアナは、精霊の存在を探し始める。

感想

難解映画として名高く、興味本位で見た作品。
うん、難しいです。
なんとなく、言わんとすることは分かるのですが、ちょいちょい「このシーンなんのために入れたんだ?」と思うシーンがチラホラ。
で、その難しくなっている原因はひとえに、映像でしか説明をする気がないからでしょう。
極端にセリフが少なく、登場人物(あるいは俳優)の動きや表情で全てを成立させようとしているんですよね。
そのため、少しでも制作側と見ている側との歯車が噛み合わないとどんどんズレていく感じがしました。

そんな手探りの中、読み取れたのが一家の次女アナの自我の芽生えでした。
この作品、冒頭で説明されるように時代は1940年代の前半。そして、一見平和そうに見えても内戦により町の外から出られないのが実情でした。
そのため、アナの父親や母親はかなり辛そう。
父親はミツバチの研究に日々を費やし、机の上でぶっ倒れるように寝ています。
母親も日々届くか分からない手紙(宛先が明示されないのですが、文章の感じからして息子?)を出してはそれが功を奏していない現実に打ちひしがれていました。

そんな環境下ではあるものの、アナは姉のイサベルと仲良くノビノビ育っています。序盤までは。
途中から、二人の個としての違いが明らかになってきて、イサベルの行き過ぎた行動にアナがドン引きするかのようなシーンが何度かありました。
イサベルがそうした思春期特有の過度な悪戯癖が見え出す一方、アナは純粋無垢さを保っていました。
しかし、その中にも少しずつ変化が。そのキーパーソン(?)となるのが、フランケンシュタインの怪物でした。
映画冒頭に、1931年版の『フランケンシュタイン』の冒頭が意味ありげに長々と流されることからも、並々ならぬこだわりを感じさせていました。
で、この映画を見たアナが、怪物が少女を殺し、怪物が殺された理由をイサベルに問うのですが、彼女の答えは「怪物は精霊で実は死んでいない」というものでした。
おそらく『フランケンシュタイン』を見ていない人でも、それが適当言っていることは分かるでしょう。
しかし、アナはこれを信じて、精霊(怪物)を探すんですね。
なんという純粋無垢さか!それをいいことにアナをからかうイサベルは、まさに成長して純粋無垢さを失った生意気なガキのようでした。

しかし、偶然にも脱走兵と出会ったことからアナはそれを精霊だと信じてしまいます。
その脱走兵との絆であったり、彼の死であったりと、アナは様々な経験を積むことに。
その現実を見据えながらも、最後まで精霊に祈り続ける純粋無垢さは子供の美しい心を感じさせていました。


難しい内容ということで、鑑賞した本作。
確かに難しいのですが、子供(アナ)の視点からストーリーを追ってみると、作品の大事なポイントは抑えられたのではないかと思います。
洗練された暖かみのある映像もあり、絵画でも見ているかのような気持ちになる洗練された作品でした。