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【ネタバレあり・レビュー】テイクバック | 雪山でジーナ・カラーノが駆け回る!寒いけど熱い作品!

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女優ジーナ・カラーノといえば、総合格闘技でも活躍をした人物です。
その経歴から『ワイルド・スピード EURO MISSION』(2013)、『デッドプール』(2016)などに出演し、一躍有名となりました。
そんなカラーノが雪山でのアクションに臨んだのが今回レビューする『テイクバック』です。

作品概要

原題:Daughter of the Wolf
製作年:2018年(日本未公開)

監督:デビッド・ハックル
脚本:デビッド・ハックル、ニカ・アジアシュビリ
主演:ジーナ・カラーノ

ストーリー

元軍人でシングルマザーであるクレアは、誘拐された息子を救うため身代金を持ち、雪山の取引場所に向かった。
犯人たちはクレアから金を受け取ると彼女を殺そうとする。
それを返り討ちにしたクレアは一味の一人ラーセンを人質に、黒幕である"父親"のもとへ向かう。

【感想】意外と悪くないけれど何かが足りないサスペンス・アクション

白熱の雪山アクション

突然ですが、私は個人的に雪山(あるいは雪原)アクションが好物です。
ビジュアルの美しさは然ることながら、動きがある程度制限される状況(走りづらかったり)、自然の猛威など、普通のシチュエーションとは異なる展開を見ることが出来ますから。
本作はそんな雪山アクションがガッツリ見れる作品でした。というか、雪山でのシーンしかありませんでした。

そのため、雪山アクションの色々な魅力を詰め込んだいたと思います。
雪に足を取られながらの追走劇、氷の張った湖への落下、林の中での銃撃戦、スノーモービル同士のカーチェイスなどなど、街中ではできない(起こりえない)要素を見せていました。
その中でも狼との攻防戦はなかなかに見もの。あれこそまさに雪山だからこそのシーンだと思います。

また、この作品ではなにかと雪山の景観を使ったシーンが多いです。
雪山への愛なのか、はたまた尺稼ぎなのかは分かりませんが、クレアが滝の真上で戦うシーンは、その景観を生かした面白いシーンであったと思います。

雪山ファンにとって、環境を生かしたアクションシーンというのは魅力的でしたね。

グダグダ・ドキドキの展開

雪原でのアクションが良かったものの、そこへの持っていき方には少し苦言を呈したいです。
というのも、グダグダが過ぎます。
たしかに、雪山での動きが制限されるシーンは好みだと書きましたが、それを何度も見せられると流石にテンポの悪さを感じました。
なにより、追いかけて捕まえる→逃げられる→また追いかけて捕まえる、なんていうシーンは必要性がありません。
敵が人質であるクレアの息子を拘束が緩かったという理由で逃げられたりもしますし、詰めが甘い……というかただただマヌケなグダグダ展開が多かったように思えました。
まあ、そうしたグダグダな展開からアクションにつなげていたので、結果的には必要になるわけで……
結果(アクション)ありきでストーリーを作るとこんな感じになるのかもしれませんね。

情緒不安定なキャラクターたち

上に書いたアクションへのつなぎ方はツッコミどころ満載でした。
ただし、他にもツッコミを入れずにはいられない所はありました。
中でもキャラクターの動きは色々と凄まじいです。

例えば、悪党の一人ラーセンはクレアに命を狙われているにも関わらず、彼女がピンチに陥ると救うという行動を見せます。
「人殺しは嫌だ」という理由こそありますが、一度は殺そうとしていたのに心変わりした理由がよく分かりません。
とはいえ、改めて考えてみて「やっぱり無理」となったと解釈すれば一応筋は通るのかも……?

一番分からないのは黒幕である"父親"の行動です。
彼は初めの内はクレアの息子チャーリーに対して好意的な感情を見せていました。(なぜか励ますような言葉すらかけていますし)
しかし、後半になっていくにつれて何故か牙をむくようになり、最終的には憎むべき相手のように振舞い始めます。
一体、何が彼をそうしたのか謎でした。
義理とはいえ息子であるラーセンをすぐに裏切者扱いしたかと思えば「お前のことを気に入っていた」と言い始めたり、情緒不安定さを随所に感じさせていました。
このせいで、リチャード・ドレイファスは大物そうなのに言動は小物となってしまっており、色々ともったいない存在となっていたと思います。
他のキャラクターも「魅力的」と呼べる人物はおらず、損をしている感じがしましたね。

この作品のタイトルについて

この作品で一番ポイントとなっていたのはタイトルだと思います。
邦題は「テイクバック」(take back)で、意味としては「取り返す」、「連れ戻す」となっています。
主人公のクレアが息子を取り返そうとする内容からすればそのままの意味として読み取れますよね。

で、気になるのが原題の方。
一番上の概要にも一応書いていますが原題は「Daughter of the Wolf」(狼の娘)となっています。
作品と照らし合わせてみると、黒い狼が随所で登場していることからもそれが関係していることは確実です。
で、この狼が何を象徴しているのかというと、個人的な推察ですがクレアの父(息子チャーリーの祖父)だと思います。
クレアの前に見守るようにして現れ、敵であった"父親"に対しては牙をむき出しにするその姿は、結構明確に示唆していたのではないでしょうか。
まあ、そもそもこの作品で「娘」と定義づけられるのはクレア一人だけですし、彼女のことであるのは確実なんですけどね。

ちなみに、狼には「死者の死者」であったり「聖者の守護者」の象徴としての意味もあるそう。(他にも色々と意味があるらしいです)
本作がそれを意図していたのかは不明ですが、符合する点もあって面白いものだと思いました。

邦題だと「狼の娘」なんてタイトルを付けてもなかなか見る人は現れないでしょう。たぶん自分も興味を持たないかと思います。
英語だからこそ出せる良いセンスのタイトルでしたね。